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海老蔵が語る歌舞伎座「七月大歌舞伎」
7月4日(木)に初日を迎える、歌舞伎座「七月大歌舞伎」について、出演の市川海老蔵が語りました。
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父を追い求める『素襖落』
昼の部、最初に海老蔵が出演するのは、新歌舞伎十八番の内『素襖落』。今まで数多くの歌舞伎十八番を勤めてきた海老蔵ですが、太郎冠者を本興行で勤めるのは初めてです。「自分の家のものは、勉強しないといけない」と言い、来年の十三代目市川團十郎白猿の襲名を前にして、『素襖落』は「やっぱり海老蔵のうちにやっておかないといけない演目の一つ」と続けます。
「父にしっかり習っていたんですよね。ですからそれを思い出しながら、今、稽古させていただいてる」と、海老蔵。十二世團十郎の『素襖落』が「好きだった」と述べ、「父は酔っ払い方が、おおらかなんです。父しかもっていない、愛嬌というか」と、亡き父を偲びます。
「酔っぱらったときは、意外と型が無い。そうなると僕らしさが出てしまう」と前置きしつつ、父の『素襖落』の「酔っぱらったあとの雰囲気は、僕は一番好き。ああいうところは真似できるように、いつかはなりたいと思っています」と、意気込みました。
息子と挑む『外郎売』
昼の部は、歌舞伎十八番の内『外郎売』にも出演する海老蔵。「私が子どもの頃に、父が(演目を改訂している)野口達二さんとよく打ち合わせをして、家で早口をやっていた」と当時を振り返ります。もともと舞踊劇であった『外郎売』を、「この形にしたというのは、十二代目團十郎の功績。世の中では『外郎売』といったら、歌舞伎はこの形になっている」と改めて、父に対する尊敬の念を示しました。
来年、八代目市川新之助としての初舞台を控える長男の堀越勸玄も、早口言葉に挑戦します。7歳で新之助を名のり、初舞台を踏んだ際に、同じ役を演じた海老蔵は、「あえて、その前の6歳でやらせることに、私はちょっとこだわっていて。私よりも先に進んでもらいたいという気持ちがある」と、息子への期待を込めます。
稽古場でも、家の中でも、練習に励んでいるという勸玄。海老蔵自身も小学生時代、「母に連れられて、家からバス停まで送ってもらう、ちょうど10分くらい。行きも『外郎売』、帰りも『外郎売』。日常のなかで埋めてもらっていた」と、懐かしげに語りました。
『義経千本桜』のすべての役を
夜の部は、通し狂言『星合世十三團(ほしあわせじゅうさんだん)』で、13役を早替りで勤めます。「実はこの企画は、かなり昔から温めていたんです。少なくとも5年くらい前から話している」と、長い時間をかけて構想していたことを明かしました。平成22(2010)年には、南座で通し狂言『義経千本桜』に出演し、忠信、知盛、権太の3役を勤めた海老蔵ですが、「そういう経験も踏まえたうえで、やはり挑戦するのであるならば、いつか千本桜ですべての役をやりたいな、と思っておりまして」と心境を語りました。
「今回は弥左衛門も維盛もやるし、休憩が本当にない台本になってしまいまして」と、海老蔵。13役の早替りは「大変どころじゃないですね」と笑い、「隈取もある、青黛(せいたい)隈もある、紅の隈もある、白塗りがあって、茶色がある。知盛から、次に替わるとき、大変なんです。血だらけになっているんですけど、それをすぐとる、それですぐ出る、って台本のト書きではそうなっています」と冗談めかして語り、どのように実現させるか、期待をふくらませました。
『義経千本桜』に登場する人物の多くが、命を絶っていくことに対し、「今回のテーマは、死ぬ、ということなんです」と真剣な面持ちで述べます。「動物の心をもっているのが狐忠信という役なんですけど、その狐の無垢な心が昇天していくところが、ひとつの眼目。動物の世というのは、ひとつのものに対して、無垢で純粋で美しいものがある。人間が見習うところがあるのではないか」と、作品の魅力に触れました。
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歌舞伎座「七月大歌舞伎」は、7月4日(木)から28日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。