ニュース

「九月花形歌舞伎」が南座で開幕

「九月花形歌舞伎」が南座で開幕

 

 9月2日(月)、南座新開場記念「九月花形歌舞伎」公演が初日を迎えました。

 四世鶴屋南北の名作として知られる『東海道四谷怪談』は、『仮名手本忠臣蔵』の外伝として描かれながら、当時世間で関心が寄せられていたお岩の怨霊噺や、密通の罪により戸板の裏表にはりつけにされ川に流された男女など、実際に起こったとされる事件がとり入れられ、現代までたびたび上演される人気作となりました。

 

 今回の四谷怪談を勤めるのはいずれも初役となる、愛之助の民谷伊右衛門、七之助のお岩、佐藤与茂七、小仏小平、中車の直助権平衛です。

 

 塩冶浪人である四谷左門の娘、お岩の婿となった伊右衛門。続く悪事にお岩と縁切りされてしまい、怒って、左門に手をかけます。時と場を同じくして、お袖に横恋慕する直助は、お袖の許婚、与茂七と勘違いして別の塩冶浪人を殺めてしまいます。誰かもわからなくなるまで斬り続ける直助に、思わず目を背けたくなる殺しの場面を、中車が演じました。

 

 実父を殺した張本人とも知らず、伊右衛門のもとに戻ったお岩は、産後の肥立ちが悪く、薬を飲みます。実はその薬は毒薬で、伊右衛門に思いを寄せるお梅の祖父、伊藤喜兵衛の企み。暗く張り詰める静けさの中でのたうち回るお岩の姿に、思わず目が離せなくなります。

 

 変わり果てたお岩に驚きながらも、お梅と祝言をあげようと、お岩から身ぐるみ剥がして金目のものを奪っていく伊右衛門。自分の欲のためなら、家や妻をも、いとも簡単に捨てるという、悪役の極みながらも、色気の滲む伊右衛門を、愛之助が見事に演じました。

 

 すべてを知ったお岩は、怒りのあまり伊藤家へ乗り込もうと、支度をする「髪梳き」の場面。どんなときにも身を整えようとするお岩の育ちの良さを感じさせながらも、梳くたびに滴り落ちる血と髪の毛に、悲運に逆らえないお岩の運命を、七之助が演じて見せました。

 

 復讐のため亡霊となり、次々と伊右衛門の周囲の人々に手をかけるお岩。暗闇の中次々と人が斬られる場面に、客席にも緊張が走ります。そして、よく知られた「戸板返し」の場面。お岩と小平の早替りが見せ場ですが、今回3役を勤める七之助は、この早替りの後、すぐに与茂七として「世話だんまり」に登場し、客席を驚かせました。

 

 大詰めの「提灯抜け」や「仏壇返し」の効果的な演出にお客様も釘づけとなりました。幕切れに、与茂七、小平女房お花が駆けつけ、伊右衛門を討って本懐を遂げると、花形俳優の熱演に客席からは大きな拍手が沸き起こり、初日の幕を閉じました。

 

 南座新開場記念 「九月花形歌舞伎」は9月2日(月)から26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。舞台写真は、舞台写真館(スマートフォンはこちら)でお楽しみください。

2019/09/05