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歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕
2月2日(火)、歌舞伎座「二月大歌舞伎」が初日の幕を開けました。
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今月も新型コロナウイルス感染拡大防止対策を徹底してお客様をお迎えしている歌舞伎座。1月に引き続き、三部制(各部総入れ替え、幕間あり、各2演目)での上演です。
2月の歌舞伎座は、歌舞伎の様式美が凝縮された『本朝廿四孝』「十種香」で始まります。舞台上には、簑作に身をやつした勝頼をはさんで、上手に切腹した許嫁の勝頼を弔う八重垣姫、下手に亡き恋人であった偽の勝頼を偲ぶ濡衣が現れ、八重垣姫が焚く香の香りとともに美しい絵面が広がります。八重垣姫が、亡くなったはずの勝頼に駆け寄りすがりつく様子や、濡衣に思いを語るくどきの場面は最大のみどころ。歌舞伎の三姫に数えられる八重垣姫に魁春、長尾謙信に錦之助、武田勝頼に門之助、腰元濡衣に孝太郎の顔合わせで、義太夫狂言の名作をお届けします。
二幕目は、松緑の伝九郎、巳之助の松平成信による『泥棒と若殿』です。十世坂東三津五郎が過去に成信を勤め、松緑と息の合った演技を見せた本作を、今回はじめて巳之助が勤めます。廃墟と知らず成信の御殿に忍び込んだ伝九郎と、幽閉され衰弱しきった成信が出会い、不思議な同居生活を通して二人の心の交流が描かれます。藩主として城に戻ることを決意した成信が伝九郎に別れを告げ、桜の花が舞い散るなか伝九郎がむせび泣く姿に、客席は感動に包まれました。立場の異なる二人の、信頼と友情にあふれた心温まる物語をお楽しみください。
第二部は、仁左衛門と玉三郎のコンビで2作品を上演します。幕開きは、四世鶴屋南北による『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』より、「悪婆」と呼ばれる役柄の土手のお六、鬼門の喜兵衛の極悪夫婦が活躍する物語です。それぞれ違う思惑からお金が欲しいお六(玉三郎)と喜兵衛(仁左衛門)は、言いがかりをつけて油屋から金を強請りとろうとします。芝居のなかで、手指を消毒する仕草が取り入れられると、客席からも笑いが起こりました。あだな姿のお六と、色気ある悪に満ちた喜兵衛の見せ場に、客席も引き込まれました。
続いては、舞踊『神田祭』です。賑やかな祭囃子で幕が開くと、舞台は祭り気分に浮き立つ江戸の町。そこに、ほろ酔い気分の鳶頭の仁左衛門が登場し、江戸前のすっきりとした踊りを見せて祭りを盛り上げます。続いて、芸者の玉三郎が自らの思いのたけをくどきで表現する場面は、みどころの一つ。粋でいなせな鳶頭と艶やかな芸者の二人がそろって踊ると、その美しさに客席も華やぎ、鳶頭が大勢を相手に軽くあしらう立廻りでは、大きな拍手が沸き起こりました。仁左衛門と玉三郎による、歌舞伎の魅力を存分に味わえる舞台をお楽しみください。
第三部は、十七世中村勘三郎三十三回忌追善狂言を上演します。一幕目は、『奥州安達原』「袖萩祭文」。十七世勘三郎は、袖萩と貞任を当り役としていました。今回は、七之助が袖萩、勘九郎が貞任、長三郎がお君を勤めます。雪のなか、盲目の袖萩は娘のお君を伴い、勘当された父の元へとやってきます。そこで袖萩が三味線を弾きながら自らの心情を語る場面はみどころです。七之助と長三郎はそれぞれ初役ですが、二人での親子役も初めて。目の見えない母の手をそっと引く、健気なお君の姿に胸を打たれます。梅玉の義家、歌六の直方、東蔵の浜夕、芝翫の宗任の顔ぶれで故人を偲びます。
続く『連獅子』は、中村屋が代々大切に勤めてきた演目。勘九郎、勘太郎親子が、それぞれ狂言師右近後に親獅子の精、狂言師左近後に仔獅子の精を勤めます。前半では、親獅子が千尋の谷に突き落とし、駆け上がってきた仔獅子だけを育てるという故事を踊りで表現します。胡蝶に誘われた二人が去ると、間狂言として鶴松の蓮念、萬太郎の遍念によるおかしみあるやり取りが繰り広げられ、客席にも笑いが広がります。やがて、張り詰めた空気のなか勇壮な姿の獅子の精が登場。長い毛を豪快に力強く振る二人に、客席からは惜しみない拍手が送られ、追善を冠した狂言にぴったりの幕切れとなりました。
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歌舞伎座場内1階ロビーには十七世勘三郎三十三回忌追善の祭壇が置かれ、写真を懐かしそうに眺めたり、手を合わせるお客様の姿も見られました。
歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、9日(火)より、北陸地方のご当地人気商品をそろえた「歌舞伎巡業公演地物産展」を開催。また、木挽町通りに面した「お土産処 木挽町」横の軒下では、8日(月)・18日(木)に「歌舞伎座朝市」を開催します。ぜひ木挽町広場や朝市にもお立ち寄りください。
歌舞伎座「二月大歌舞伎」は、27日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。