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歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」初日開幕
11月1日(月)、歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」が、初日の幕を開けました。
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安心安全にご観劇いただくため、新型コロナウイルス感染拡大防止対策を徹底してお客様をお迎えしている歌舞伎座。今年も無事、顔見世の始まりを知らせる鳳凰丸が染め抜かれた櫓が、歌舞伎座の正面玄関に掲げられました。
第一部は、「コウノトリ野生復帰プロジェクト」に取り組む兵庫県豊岡市の近畿地方最古の芝居小屋・出石永楽館で上演されてきた、『神の鳥(こうのとり)』で幕を開けます。子どものこうのとりを生贄に捧げ大願成就を祈念しようとする、東蔵勤める赤松満祐とその家臣たち。そこへ愛之助と壱太郎勤める二人の狂言師が現れ、奉納の舞を披露します。狂言師が親鳥の本性を現し、子どもを助けようとするも窮地に陥るなか、助けに入った愛之助勤める山中鹿之介幸盛が見せる立廻りは大きなみどころです。悠然と立ち去る幸盛に、大きな拍手が送られました。
続いては名作『井伊大老』から、桜田門外の変の前夜が描かれた「千駄ヶ谷井伊家下屋敷」です。井伊直弼の愛妾である魁春演じるお静の方が、歌六演じる仙英禅師と、慎ましくも楽しく暮らしていた直弼との若き日を懐かしみ、深い思いを見せます。白鸚演じる直弼とお静が桃の節句の宴で心を通わせる場面では、春の雪が降るなか豪華な雛飾りの前で自らの苦悩を語る直弼の姿が、観る者の胸を打ちます。直弼を支え続けたお静とのやりとりには情愛がにじみ、客席はすっかり引き込まれました。
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第二部は、十世坂東三津五郎七回忌追善狂言として『寿曽我対面』が上演されます。三津五郎の長男・巳之助が初役で挑む曽我五郎に、菊五郎、時蔵、松緑、雀右衛門、左團次と、顔ぶれがそろい、名優を偲びます。父の仇を討とうと血気盛んな五郎と、それを諭す時蔵演じる十郎。荒事と和事の様式をそれぞれ見せる二人に対し、菊五郎演じる工藤祐経が大きさを表します。幕切れでは絵面の見得となり、歌舞伎の様式美が凝縮された、顔見世にふさわしい華やかなひと幕となりました。
続く『連獅子』では、祖父と孫である仁左衛門と千之助が共演。幕が開くと、仁左衛門演じる狂言師右近が厳しくも温かい親獅子の情愛を、千之助演じる狂言師左近が仔獅子のけなげさをそれぞれ舞で表現します。門之助演じる専念、又五郎演じる日門によるユーモラスな「宗論」を挟んで、ついに白毛の親獅子の精と赤毛の仔獅子の精が登場すると、場内の熱気が高まります。二人が勇壮かつ華麗な毛振りを披露し、客席からはあふれんばかりの拍手が送られました。
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第三部は、忠臣蔵の世界を新たな演出で上演する『花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)』です。幸四郎と猿之助を中心に花形俳優が集い、四十七士や討ち入りに関わるさまざまな人物の名場面を、勢いよくスピーディーな展開でお届けする、みどころ満載の本作。『仮名手本忠臣蔵』の大序の世界で幕を開けると、小浪と力弥の縁組みに若狭之助が心を砕く「桃井館」、「徳利の別れ」を題材にした「稲瀬川々端」へと続いていき、客席も固唾を飲んで討ち入りまでの行く末を見守ります。
さらに、亡き主君の奥方との涙の別れを描いた「南部坂雪の別れ」、討ち入り当日の吉良邸隣家の物語『土屋主税』を『仮名手本』の世界に置き換え、クライマックスは十一段目より「高家奥庭泉水」「花水橋引揚げ」。それぞれの場面で歌昇、新悟、尾上右近、廣太郎、米吉、隼人はじめ、若手俳優が重要な役どころを気持ちを込めて演じると、客席は一体感に包まれ、幕切れには大きな拍手が沸き起こりました。
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歌舞伎座場内1階ロビーには十世三津五郎七回忌追善の祭壇が飾られ、懐かしそうに写真を眺めたり、手を合わせるお客様の姿も見られました。
歌舞伎座地下の木挽町広場では、26日(金)まで「食べるJAPAN 美味アワード」を開催。日本の一流シェフ集団が審査した全国の逸品を販売しています。また、歌舞伎座厨房謹製の「歌舞伎座おせち料理」もご予約受付中。第一部『神の鳥』上演記念特設コーナーもございますので、ご観劇の際はぜひお立ち寄りください。
歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」は、26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。