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菊之助、丑之助が語る、歌舞伎座『鼠小僧次郎吉』

菊之助、丑之助が語る、歌舞伎座『鼠小僧次郎吉』

 

 2月1日(火)から始まる歌舞伎座「二月大歌舞伎」に出演する尾上菊之助、尾上丑之助が、公演への思いを語りました。

 先人たちが築いた歌舞伎

 「二月大歌舞伎」では、音羽屋ゆかりの演目『鼠小僧次郎吉(ねずみこぞうじろきち)』が上演されます。安政4(1857)年に河竹黙阿弥により書き下ろされたこの作品は、明治・大正の時代から代々の菊五郎により演じられています。今回の公演では、菊之助が稲葉幸蔵(鼠小僧)を、丑之助が蜆売り三吉を、それぞれ初役で勤めます。

 

 このたび行われたスチール撮影では、大正14(1925)年のブロマイドと同じ構図で、雪のなかに佇む幸蔵と三吉がおさめられています。菊之助は「私も丑之助も、口伝など、先人たちの築き上げたものをいただいたうえで稽古をすると、型の上に自然と心情がのることを勉強しているところです。やはり歌舞伎は先人たちの知恵、温故知新、それに支えられている」と、語ります。 撮影をふりかえり、「寒いふりをすることや、体の向きが難しかった」と、語る丑之助は、今年1月の降雪の際に雪合戦や歩き方の研究をして、雪の感覚を覚えたとのこと。全身を使い、役どころの会得に前向きな様子がうかがえます。

 

菊之助、丑之助が語る、歌舞伎座『鼠小僧次郎吉』

 

心にあかりを灯す芝居を

  「上演にあたり、父(七代目尾上菊五郎)から、今の時代にこの作品が合うのかどうかもう一回考えてみては、とアドバイスを受け、再度原作を読みました」と、明かす菊之助。「江戸時代は人間がいつ生まれたかで、その業を占っていました。盗人になりやすいという庚申の生まれの幸蔵ですが、黙阿弥さんは幸蔵自身に盗みを宿縁として受け入れさせ、その意味を気づかせていきます。仏教の教えの、喜心、老心、大心の三心を大切にしていけば、自ずと自分の心が輝くことを、この作品は説いているのでは」と、言葉を選びながら、深い考察を語ります。

 

 「勧善懲悪の、風情で魅せるお芝居に思えますが、書かれていることは非常に深い。安政は台風や地震が頻発し、世の中が殺伐としていた時代です。黙阿弥さんは、人がどうしたら笑って明るい気持ちで生きられるかを書いていると私は思っています。私もこのコロナ禍の時代に、少しでも苦しんでいる方の心に灯りをともすことができれば」と、現代での上演の意義にも触れます。

 

美しさの奥にあるテーマ

 丑之助からはお稽古について、「せりふは全部覚えました。(菊之助から)せりふの表現で、ここを強くする、悲しそうになどを教わり、どんな心で言うかを整えています」という頼もしいコメントも。菊之助は、「丑之助は最近、お芝居が好きになって、劇場に長い芝居を観に来るようにもなりました。手放しに褒めてくれる人としては父がいるので、私はスパルタでお稽古したいと思います」と、厳しくも温かいまなざしを向けました。

 

 「先代たちの鼠小僧は、江戸から抜け出したような風情が体からにじみ出ていて、また音羽屋ならではの形の良さで見せることを代々、大切にしてきている。江戸の市井に生きる人のにおいが出せる役者になる、という宿題をいただいたと思っています。そして風情やせりふの美しさの奥の、豊かな人生の送り方というテーマを、私が演じることで提示できるのかどうか、非常に挑戦だと思っています」と、決意にあふれる菊之助。音羽屋の歴史を受け継ぐ、令和の鼠小僧への挑戦に、期待が高まります。

 歌舞伎座「二月大歌舞伎」は2月1日(火)から25日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

菊之助、丑之助が語る、歌舞伎座『鼠小僧次郎吉』

2022/01/24