ニュース

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕

 

 2月1日(火)、歌舞伎座「二月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 歌舞伎座では引き続き三部制(各部総入れ替え、幕間あり)で公演を行います。令和4(2022)年より客席は間隔を空けた2席並びを原則とする配置で販売し、換気、消毒など、感染予防対策を徹底してお客様をお迎えします。

 

 第一部は、真山青果による新歌舞伎の名作『元禄忠臣蔵』より、「御浜御殿綱豊卿」から始まります。舞台は、毎年恒例の華やかなお浜遊びが催されている徳川綱豊卿の屋敷。梅玉勤める綱豊卿は、次期将軍と目されるも政事に関心がないように振る舞っていますが、本心では赤穂浪士の仇討ちに心を寄せています。そんな綱豊と、松緑勤める血気盛んな赤穂の浪士、富森助右衛門が互いの本心を探り合い繰り広げる白熱したせりふの応酬に、客席も引き込まれていきます。義の本質を説く能装束姿の綱豊が、御浜御殿の夜桜に映える美しい絵面が胸に残ります。

 

 続いては、能の「石橋」を素材にした獅子物と呼ばれる舞踊の代表作『石橋』。唐の国の清涼山にある石橋に現れたのは、錦之助、鷹之資、左近が勤める、文殊菩薩の遣いである獅子の精たち。牡丹の花を背景に、清涼山の荘厳な風景を踊り描くと、華やかな音曲につられ次第に勇壮な獅子の狂いを見せていきます。錦之助の白頭と、鷹之資、左近の赤頭による激しい毛振りに、客席からは大きな拍手が起こりました。

 第二部は、「曽我物」を題材に七種行事を織り込んだ、早春を思わせる華やかな舞踊『春調娘七種』で幕が開きます。鼓を手にした梅枝勤める曽我十郎と、萬太郎勤める曽我五郎が、工藤祐経の館の前で勇み立ちます。二人を止めるかのように、間に入って七種を摘むのは千之助勤める静御前です。梅の花を背景に踊る三人の姿は、まるで錦絵のよう。静御前が七種をたたく仕草に合わせ兄弟が鼓を打つ「七種の合方」から、三人が見得で決まると劇場は清々しい空気に包まれました。

 

 続いて、歌舞伎の三大名作の一つ『義経千本桜』より「渡海屋・大物浦」。当月は、仁左衛門が一世一代で勤めます。船頭の姿で花道から現れたのは、仁左衛門勤める渡海屋銀平実は新中納言知盛。その颯爽とした姿に、すぐに客席は物語の世界に引き込まれていきます。時蔵勤める源義経を海上で討つため鎧姿となって素性を現すと、満身創痍の鬼気迫る立廻り、大碇とともに海へ身を投げる知盛の壮絶な最期に、客席から万雷の拍手が起こりました。

 第三部は休演の芝翫に代わり、彦三郎が代役を勤める山樵実は長田太郎と、雀右衛門勤める白拍子実は松の前が、せりふにあわせてテンポよく拍子をとって舞う『鬼次拍子舞』から始まります。名笛を探している松の前が、色仕掛けで長田の懐を探る仕草は観る者のおかしみを誘います。二人の軽やかな手踊りから一転、互いに素性を明かして、立廻りが始まります。軽快で華やかな音楽に、様式美あふれるひと幕となりました。

 

 「二月大歌舞伎」最後の演目は、河竹黙阿弥作『鼠小僧次郎吉』です。音羽屋が受け継いできた演目を、菊之助の稲葉幸蔵と丑之助の蜆売り三吉という、97年ぶりとなる親子の配役で上演します。鼠小僧こと幸蔵が、心中を決心した刀屋新助と芸者お元を助けたことから物語が思わぬ方向に展開します。雪の降りしきるなかを、易者姿の幸蔵を追いかけてお元の弟の三吉が登場すると、客席からはあたたかい拍手が送られました。黙阿弥の七五調の流麗なせりふに乗りながら、見えぬ糸で結ばれた人々のつながりが徐々に明らかになる心を打つ人間ドラマが繰り広げられました。

 「二月大歌舞伎」公演中には、駄洒落にも似た言葉遊びの「地口」が書き込まれた「地口行燈」が各所に飾られています。また、歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、2月9日(水)よりご当地大人気商品をそろえた「北海道物産展」を開催します。ご来場の際は、ぜひお立ち寄りください。

歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕 「大物浦」を描いた地口行燈
歌舞伎座「二月大歌舞伎」初日開幕 「北海道物産展」開催中の木挽町広場
 

 

 歌舞伎座「二月大歌舞伎」は25日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/02/04