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歌舞伎座「四月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「四月大歌舞伎」初日開幕

 

 2024年4月2日(火)、歌舞伎座「四月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

【大きなサイズの舞台写真は、ページ下部でご覧いただけます】

 昼の部の幕開きは、『双蝶々曲輪日記』より名場面の「引窓」です。中秋の名月を翌日に控え、南与兵衛(梅玉)の家で、亡き父の後妻お幸(東蔵)と女房お早(扇雀)が放生会の支度をしているところへ、相撲取りの濡髪長五郎(松緑)が現れます。久々に実子の長五郎に会ったお幸の無邪気な喜び、死ぬ覚悟を打ち明けられない長五郎の苦しみの対照が胸に響きます。義理の母を思う優しさがにじむ与兵衛、実子と継子の間で苦悩するお幸、夫を愛しながら母の心情を思うお早、そして与兵衛の情けを感じ縄に付こうとする長五郎と、それぞれの思いが繊細に描かれ、胸に沁みるひと幕となりました。

 

 続いては、舞踊『七福神』。室町時代末期頃から始まったとされる七福神信仰を素材として、平成30(2018)年に歌舞伎座で新たな音楽、振付で上演された本作。このたびは、歌昇、新悟、隼人、鷹之資、虎之介、尾上右近、萬太郎という花形七人がいずれも初役で勤めます。富士山を背景に、宝船が七福神を乗せてやってくると、天下泰平を喜び、いつまでも平安な世が続くようにと願いながら、神々が酒を楽しんだり、恋の手習いの艶っぽい踊りを見せたりと、賑やかで愛嬌に満ちた空気が客席を包みます。春の陽気に相応しく、花形たちが心躍る舞踊を披露しました。

 

 上方狂言の人気作『夏祭浪花鑑』では、愛之助が団七九郎兵衛と徳兵衛女房お辰を、菊之助が一寸徳兵衛を勤めます。住吉神社で出牢する団七を待つのは、女房のお梶(米吉)と伜の市松(秀乃介)、釣船三婦(歌六)。髪や髭が伸び放題の団七が、身なりを整えて浴衣姿で現れると、その爽やかな佇まいが場内を魅了します。大恩人の息子・玉島磯之丞(種之助)とその恋人琴浦(莟玉)の危難を救うために奔走する団七。立札を用いた徳兵衛との息の合った立廻り、勢いある花道の引っ込み、愛之助による一本気な団七と気風がよく筋の通ったお辰の演じ分けなど、みどころ満載です。泥にまみれながらの舅義平次(橘三郎)殺しの場は歌舞伎らしい様式美にあふれ、息を呑む展開に客席は大いに盛り上がりました。

 仁左衛門と玉三郎の競演が話題の夜の部。幕開きは、四世鶴屋南北の『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』より、土手のお六と鬼門の喜兵衛に焦点を当てた人気作です。惚れた男のために悪事を働く“悪婆”と呼ばれる役柄の土手のお六を玉三郎、色気ある悪に満ちた喜兵衛を仁左衛門が勤めます。昭和46(1971)年に初めて二人で勤めて以来、上演を重ねてきた当り役。凄味を見せながらも、二人の息の合った強請りの場は観客の心を引き込み、山家屋清兵衛(錦之助)に企てを見破られてしまうユーモアある展開に、観客からは笑いとともに大きな拍手が起こりました。

 

 続いては、同じく仁左衛門・玉三郎による舞踊『神田祭』です。江戸の二大祭の一つである「神田祭」を題材とした舞踊で、粋でいなせな鳶頭を仁左衛門、艶やかな芸者を玉三郎が勤めます。賑やかな祭囃子で幕が開くと、そこは祭り気分に浮き立つ江戸の町。華やかな江戸風情が場内に漂います。仁左衛門演じるほろ酔い気分の鳶頭が登場し、江戸前のすっきりとした踊りを見せて祭りを盛り上げ、続いて玉三郎演じる芸者が、自らの思いの丈をくどきで表現します。二人がそろって踊る場面ではその美しさに客席も華やぎ、鳶頭が大勢を相手にする立廻りでは、割れんばかりの拍手が送られました。

 

 夜の部の最後は、日本の四季折々の風情を美しく描いた舞踊『四季』。「春 紙雛」では菊之助の女雛、愛之助の男雛の仲睦まじい恋模様が描かれ、「夏 魂まつり」は大文字の送り火を舞台に、芝翫、橋之助、歌之助、児太郎らが情緒豊かに踊ります。

 

 「秋 砧」は筝の音に乗せて、孝太郎演じる若妻の夫を思う心がしっとりと描き出され、「冬 木枯」では松緑と坂東亀蔵のみみずくが見つめる先で、木枯らしに舞う木の葉の動きを群舞で鮮やかに表現。とんぼやアクロバティックな動きが盛り込まれた振付に拍手が起き、情緒豊かな日本の四季を描く優美な舞踊に酔いしれるひとときとなりました。

 歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、海外のお客様にもおすすめ、そして日本のお客様にも見て楽しい、選んで楽しいインバウンドコーナー「SOUVENIR JAPAN」を新設。ご観劇の際にはぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「四月大歌舞伎」は、26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2024/04/04