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時蔵、児太郎に松尾芸能賞

時蔵、児太郎に松尾芸能賞

 「第45回松尾芸能賞」贈呈式 前列左より、米川文清(優秀賞)、中村時蔵(大賞)、松尾國之公益財団法人松尾芸能振興財団理事長、佐藤B作(優秀賞)、古田新太(優秀賞)、後列左より、中村児太郎(新人賞)、由紀さおり(特別賞)、豊竹呂勢太夫(優秀賞)、林与一(功労賞)

 2024年3月29日(金)、「第45回松尾芸能賞」贈呈式が行われ、演劇部門の大賞を受賞した中村時蔵と、新人賞を受賞した中村児太郎が出席しました。

 公益財団法人松尾芸能振興財団による松尾芸能賞は、「長年にわたり日本の文化・芸能の保存、向上に寄与した芸能出演者や演出・音楽・劇場芸能に高い技能を持つ人々」に贈られるもので、今年で第45回を迎えました。

 

時蔵、児太郎に松尾芸能賞

 

 時蔵の贈賞理由として、「26歳の若さで五代目中村時蔵を襲名して以来、歌舞伎界を代表する女方として実力を発揮してきた。古風ななかに艶やかさと鷹揚さがあり、どのような役を演じても時蔵ならではの味わいを見せてきた。2023年は、初役ながら『妹背山婦女庭訓』太宰後室定高で情理を弁えた演技で立女方の風格を、『鎌倉三代記』三浦之助義村では凛々しさのなかに義太夫歌舞伎らしいコクを表現した」と、長年の功績とともに昨年の舞台での顕著な成果が紹介されました。

 

 大賞を受賞した時蔵は、「昨年勤めました『妹背山婦女庭訓』の定高は、女方のなかでも大役中の大役でございます。若いときからいつかこの大役をやってみたいと準備をしていた役で(大賞を)頂戴できること、本当にうれしく思います」と、喜びを表します。「今年の6月、私は名前を息子に譲り(初代中村萬壽に)名前が変わりますが、今以上に芸道に精進し、大賞に恥じぬよう努めてまいる所存でございます」と、力強く述べました。

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時蔵、児太郎に松尾芸能賞

 

 また、児太郎は新人賞を受賞。「6歳の初舞台から10代後半まで立役を数多く演じ、着実に進境を重ねてきた。坂東玉三郎の指導を得て『壇浦兜軍記』の琴・三味線・胡弓を弾きこなす難役、遊君阿古屋を史上最年少で演じ、芸への覚悟と執念が歌舞伎俳優として大きく成長させた。2023年は『神霊矢口渡』の娘お舟、『助六由縁江戸桜』の三浦屋揚巻を初役で演じ高い評価を得た」旨が紹介されました。

 

 受賞のステージに上がった児太郎は、「新人賞を受賞することになり、一番最初に父(中村福助)に報告しました。本当に身が引き締まる思いですし、夢のようでございます」と、まずは率直な思いを口にします。受賞理由の一つである『神霊矢口渡』のお舟は、「今回大賞を受賞されました時蔵のおじさまに、大変懇切丁寧に教えていただきました。少し恩返しができたのでは」と、感謝の気持ちを込めます。「新人賞に恥じることのない良い役者になれるよう、日々精進いたします」と、気を引き締めました。 

 贈呈式後の取材に出席した時蔵は、「43年間守った時蔵最後の年に、このような素晴らしい賞も頂戴でき、五代目時蔵の集大成の年になったと思います。(6月からは)新しい名前を自分で一から築いていかなければいけないという気持ちでいっぱいです」と、これからの決意も新たに述べました。

 

時蔵、児太郎に松尾芸能賞

 「第45回松尾芸能賞」佐藤B作(優秀賞)、古田新太(優秀賞)、 中村時蔵(大賞)、由紀さおり(特別賞)

 

2024/04/02