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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」初日開幕
2022年8月5日(金)、歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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歌舞伎座では引き続き、換気や消毒を徹底するなど感染予防対策に万全を期しながら、三部制(各部総入れ替え、幕間あり)での上演を続けています。
第一部は、新作歌舞伎『新選組』から。主人公の深草丘十郎を歌之助、その親友・鎌切大作を中村福之助が勤めます。舞台には漫画のコマを表した印象的な舞台美術が配され、まるで漫画のページをめくっていくかのよう。手塚治虫作品でおなじみのキャラクターも舞台の随所に散りばめられています。歌之助と兄・福之助の熱のこもったせりふや、兄弟二人による息の合ったスピード感のある立廻り、汁粉屋でほっとひと息つく姿も印象的。若者たちを見守る勘九郎演じる近藤勇、七之助演じる土方歳三ら新選組隊士たち一人ひとりの存在が物語を深め、彌十郎演じる芹沢鴨と扇雀演じる坂本龍馬が舞台上に現れると、グッと舞台の密度が上がります。花形が活躍する“納涼歌舞伎”らしい公演に、客席からは大きな拍手が送られました。
続いては、舞踊『闇梅百物語』です。舞台は「百物語」が行われているとある大名屋敷。最後の灯火を吹き消し辺りが怪しげな雰囲気に包まれると、宙に浮く一本足の傘に、狸や河童など、個性豊かな妖怪たちが次々と登場します。艶やかな美しさの七之助演じる雪女郎に続き、勘九郎、勘太郎、長三郎が演じる骸骨たちが登場すると、可愛らしくもユーモラスな姿に会場は大盛り上がり。最後に現れたのは百鬼夜行の読本を持った3人の読売。実はこの読売たちの正体は…。「百物語」の怪異に始まり、個性豊かな妖怪たちの踊りなど、みどころが続く夏にぴったりのひとときとなりました。
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第二部は、『安政奇聞佃夜嵐』で幕を開けます。明治の初めに実在した脱獄事件をもとに、大正3(1914)年に古河新水(十二世守田勘弥)が、時代設定を安政期に改め書き下ろした世話物を、幸四郎の青木貞次郎、勘九郎の神谷玄蔵という組み合わせで、実に35年ぶりに上演します。舞台は冬の人足寄場。泳ぎが得意な青木と泳ぎが苦手な神谷の二人が、何とか隅田川を泳いで脱獄する場面では、幸四郎と勘九郎のコンビならではの面白みあふれるやりとり、どこか憎めない可愛らしさも漂う様子に、会場から笑いが漏れます。そして物語は親の仇討ち、埋蔵金も絡み、後半に進むにつれてスリリングな展開を見せていきます。最後の最後まで見逃せない展開、歌舞伎ならでは演出で客席を魅了しました。
続いては、澤瀉十種の内『浮世風呂』。洒落た味と軽快な動きがみどころの舞踊で、小粋な三助政吉を猿之助、艶っぽい女なめくじを團子が勤めます。幕が開くと、そこは朝日が差し込む風呂屋。せわしなく働く三助の粋な様子を、猿之助が軽快に見せていきます。そこへいつの間にやら現れたのは、女の姿をしたなめくじ。なめくじは三助に惚れ、口説きにかかりますが…。惚れた三助にすり寄っていくなめくじの様子や、それに驚き逃げる三助の滑稽さが面白く、テンポよく踊り進めていく様子が目にも耳にも心地よいひと幕に、客席からは大きな拍手が送られました。
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第三部は、『東海道中膝栗毛 弥次喜多流離譚(やじきたリターンズ)』です。3年ぶりの歌舞伎座での上演となる今回は、前回、伊勢神宮の花火で天高く打ち上げられてしまった弥次喜多の二人がたどり着いた、遠く離れた無人島から始まります。幸四郎と猿之助の弥次喜多コンビが舞台上に登場すると、客席からは熱烈な拍手が送られました。無人島から何とか長崎までたどり着いた二人は、古巣である歌舞伎座の閉館の危機を救うため、歌舞伎座を目指します。歌舞伎の名作のパロディがいたるところに盛り込まれ、予想外の展開に驚きの連続で飽きる間がなく次の場面へ。好評を博した配信版の図夢歌舞伎『弥次喜多』の舞台“家族商店”の登場も見逃せません。
これまでも梵太郎と政之助を演じてきた染五郎と團子は、今回、弥次喜多シリーズでは初の女方にも挑戦します。早替りで2役を華麗に演じ分け、淡い恋模様を描く場面も。久々の本水の立廻りもあり、涼を感じる演出に客席は大興奮。「弥次喜多」シリーズおなじみのメンバーも総出演し、今年もドタバタ珍道中を繰り広げます。コロナ禍からの復活への願いを込めた舞台に、客席は明るく晴れやかな空気に包まれました。
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歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、8月30日(火)
また、歌舞伎座タワー5階の歌舞伎座ギャラリーでは、「松竹歌舞伎」×「手塚マンガ」コラボ企画として、壁面展示を実施中。全長2mのコラボ特大羽子板も無料でご覧いただけますので、合わせてお楽しみください。
歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」は30日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。
※澤瀉屋の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です