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幸四郎が語る、歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」

幸四郎が語る、「秀山祭九月大歌舞伎」

 

 2022年9月4日(日)から始まる歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」に出演の松本幸四郎が、公演に向けての思いを語りました。

 幸四郎の曽祖父にあたる、初世吉右衛門ゆかりの演目を上演する「秀山祭」。今年の「秀山祭九月大歌舞伎」は、昨年逝去した二世中村吉右衛門の一周忌追善と銘打ち、公演が行われます。甥である幸四郎は、「秀山祭の興行ができることがまずありがたいです。そこで叔父の一周忌の興行ができる。叔父の存在の大きさを改めて感じます。それぞれの演目に叔父の魂が込められていると思います」と、引き締まった表情で述べました。

 

叔父を思い出して立つ舞台

 第一部の『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」では、二世吉右衛門が当り役としていた松王丸と武部源蔵を、幸四郎と尾上松緑が日替りで勤めます。二世吉右衛門を偲び、二人とも黒地に雪持松の衣裳で松王丸を演じると明かした幸四郎は、「敵役からモドリになることをくっきりと伝えないといけない。一切そうは見せませんが、松王丸は最初の入りから、子どものことで頭がいっぱいになっているのだと(叔父に)言われました」と、役を教わったときのことを振り返ります。

 

 「『寺子屋』は本当に大事な作品の一つ。それを、今のお客様に受け入れていただくことにかける叔父の思いを強く感じていました」と言う幸四郎。「来月は、ひと月の間、真正面からどれだけ叔父のことを思い出せるか。そういう思いで舞台に立とうと思っています。叔父に似せようとするのではなく、教えていただいたことをしっかり勉強し直して勤めたいです」と、真摯に語ります。

 

 現在まさに製作中の『揚羽蝶繍姿(あげはちょうつづれのおもかげ)』は、二世吉右衛門がこれも当り役として多く勤めた複数の作品の見せ場を、次代の俳優たちが演じていく作品です。「叔父をたくさん思い出していただき、また、一つの演目としても、感動していただける作品を目指したいです。叔父がいない悲しさはいつまでも変わりません。でも、僕たちを通してこの作品を観ていただき、今の俳優たちがこれから継いでいくのだと、希望をもっていただけるようなお芝居にしたい。そこで初めて意味がある作品になると思います」。

 

幸四郎が語る「秀山祭九月大歌舞伎」

 

新たな始まりとなる秀山祭

 思い出のなかで特に印象的だったのは、初めての『引窓』の稽古だと言います。「もちろん、せりふ回しは表現方法として大事ですが、まず第一に気持ちがあるのだと。こういうふうに言うんだよ、と本当に涙を流してせりふをおっしゃるんです。思いをせりふ回しの技術に乗せて伝え、お客様の心に入り込んでいく。まさに播磨屋の情熱的な芸を、精神として受け継がれていらっしゃるのだと感じました。その稽古は宝物ですね」と、感慨深げに述べました。

 

 また、幸四郎は、二世吉右衛門にはその大きさだけでなく、「岩のようにぶれない存在感」を感じていたと話します。「どうすればお客様に感動していただけるかを体現されていて、ぶれない。これまでもこれからもずっと必要とされるものとしての歌舞伎の力を信じ、先人を信じ尊敬して、それが支えやエネルギーになっていたのかなと思います。また、常に努力し勉強しようとする意識のあり方がお客様の信頼を生んだのではないでしょうか」。

 

 「教えていただいたお役は、叔父が見てくださっていると思って勤めています。そうすることでお客様にも叔父を感じていただけるのではないか。それが今舞台に立っている自分の勤めだと思います」。深い思いを込めながら、一つひとつの言葉を紡いだ幸四郎。最後に、「曽祖父の芸の精神という色合いをもつ、秀山祭の冠がついた興行が再び始まります。これが新たな始まりとなるように、秀山祭がこれからも歌舞伎座12カ月のひと月となるように、しっかりと勤めたいと思います」と、まっすぐな眼差しで語りました。

 歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」は、9月4日(日)~27日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2022/08/26