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鴈治郎、幸四郎が語る、歌舞伎座『祇園恋づくし』
2022年10月4日(火)から始まった歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」第二部『祇園恋づくし』に出演の中村鴈治郎、松本幸四郎が、公演に向けての思いを語りました。
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大盛況だった演目を東京でも
今年7月、大阪松竹座で関西の夏を盛り上げた『祇園恋づくし』が、鴈治郎と幸四郎による同じ配役で、10月の東京 歌舞伎座で再演されます。鴈治郎は、「今年の7月の大阪は船乗り込みもあり、久々に歌舞伎公演が大阪でできたため、大いに盛り上がっていただけた」と振り返り、「古典のものは当たり前に何遍も上演するわけですが、『祇園恋づくし』は父(四世坂田藤十郎)がやっていたものとはいえ、新しくつくった気持ちがあるので本当にうれしい」と、3カ月という早さでの再演に喜びを表します。本作の背景にある祇園祭が、今年3年ぶりに開催されたことにも触れ、「京都にとって祇園祭は意味のある祭りなのだとつくづく感じました。その風情などが東京の方々にも伝われば」と、歌舞伎座での上演に向けて、思いを口にします。
幸四郎は、平成9(1997)年南座で四世藤十郎と十八世中村勘三郎が初演した舞台の映像を見たといい、「とても刺激的なお芝居で、その芸術的な笑いに感激しました。ぜひやりたい、とずっと思っていたので、大阪でそのチャンスが巡ってきたときは、本当にうれしい限りでした」と、感慨深げに語ります。「上方、京都を舞台にしたお芝居ですが、東京でできるやり方があるのではと思い、演出に少し手を入れて、“言葉”で皆様の気持ちを(京都と江戸で)あちこち揺さぶることを目標に、勤めたいと思っています」と、意気込みます。
男女2役早替りでみせる『祇園恋づくし』
「この芝居は2役早替りでさらに面白くなる。幸四郎さんとも初めから、お互い2役演じるのであれば上演しようか、と話していました」という鴈治郎。大阪松竹座公演に引き続き、大津屋次郎八と大津屋女房おつぎの2役を勤めます。「京男は、はっきり物を言っているような、言っていないような、掴みにくいところがあるかもしれない。この演目では、そのような部分が“恋”などにしがらんできているのでは」と、語ります。おつぎの役は、「(父のようにやっているのではなく)自分、私のつもりです。旦那のことが好きなのでしょうね。好きでやきもちを焼く」と、自身で役をつくりあげる様子を明かしました。
一方、幸四郎は指物師留五郎と芸妓染香の2役を勤めます。早替りのたび、染香の白塗りを落として舞台に上がることについて、「これまでと同じ台本で間に合うかどうか、稽古で一回試してみようと。だめなら(白塗りを落とすことは)なしで、ということになるのですが、間に合ってしまったんです」と、笑顔で話します。「(染香を演じる際)容姿に関してはすごく綺麗だと思い込んでやっています(笑)。この演目では、立役は男として、女方は女だと思ってやることが大事ではないかと思いますので、しっかり演じ分けて、切り替えていければと思います」。
郷土自慢を楽しんで
『祇園恋づくし』一番の眼目は、なんといっても次郎八と留五郎が京都と江戸のお国自慢を披露する場面。幸四郎は、「お互い本当に江戸が好き、京都が好き、という思いにあふれているからこそ、食い違いや言い合いになってしまう。郷土愛がある人たちばかりですので、自信をもって生きていると思うんです。そういう“生きている強さ”を感じていただけるのでは」と、アピール。鴈治郎も頷きながら、「いい意味の本気と本気のぶつかり合いみたいなところはありますよね。だから、リアルだったりするのかもしれません」と、続けます。
また、「歌舞伎座の舞台は大きい」と口をそろえた二人。「上方のものを上演するときに、歌舞伎座だと大きすぎることがある。その空間は埋めていかなければいけないですし、やる限りは皆さんに楽しんでいただける作品にしたいと思っています」と、鴈治郎は気持ちを込めます。幸四郎は、「早替りは大阪松竹座だったので、間に合ったところもあります。歌舞伎座では走る距離がかなり違いますので、(劇場が変わることによりお芝居の)テンポなどはやはり変わってくるのではないかなと思っています」と、気を引き締めます。
鴈治郎からは、「私から逃げようとする場面で、行く前から少しずつ離れないでほしい。広い歌舞伎座では捕まえられないかもしれないので、(大阪松竹座でされた)リードだけはやめていただきたいです(笑)」と、幸四郎にお願いをするひと幕も。二人が歌舞伎座で見せる息の合った『祇園恋づくし』に、今から期待が高まります。
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歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」は、27日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。