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松緑が語る歌舞伎座「十二月大歌舞伎」、「壽 初春大歌舞伎」

松緑が語る歌舞伎座「十二月大歌舞伎」、「壽 初春大歌舞伎」

 

 2023年12月3日(日)から始まる、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」第二部『俵星玄蕃』、2024年1月2日(火)から始まる、歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」昼の部『荒川十太夫』に出演する尾上松緑が、公演に向けての思いを語りました。

 

今年最後の歌舞伎に、ハッピーエンドを

 令和4(2022)年10月歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」で上演された『荒川十太夫』に続き、数ある「赤穂義士伝」のなかから『俵星玄蕃』を選んだ理由について松緑は、「12月は実際に赤穂義士が討入りを行った日と公演が重なるので、討入り当夜の話がメインとなる『俵星玄蕃』を選びました。また、年末ということもあり、お客様に今年最後の歌舞伎として、派手な演出もあるハッピーエンドの演目で締めくくってもらえたらと考えました」と、上演の意図を明かします。

 

松緑が語る歌舞伎座「十二月大歌舞伎」、「壽 初春大歌舞伎」

 

 本作も『荒川十太夫』に続き、講談を元にした作品。「俵星玄蕃と赤穂義士の一人である杉野十平次が腹の探り合いをする場面は、講談では一人で2役を演じますが、歌舞伎では俳優対俳優。二人の人間がやりあうのとでは、表現の方法が変わってきます。また、槍の名人とされる俵星玄蕃の立廻りなど、講談の世界を視覚化する面白さに歌舞伎でやる意義があると思っています。酒飲みで宵越しの銭を持たない俵星玄蕃の内なる葛藤も描きつつ、最後は大団円で終わらせたい」と、新たな作品に意気込みます。

 

新年に心が温かくなるような作品を届けたい

 昨年の初演で好評を博し、早々に再演の運びとなった『荒川十太夫』について松緑は、「本当にありがたいと思っております。私の力というよりも、一緒につくり上げていった脚本家や演出家、そして一緒に芝居をした仲間たちのおかげで、「大谷竹次郎賞」や「文化庁芸術祭賞・芸術祭優秀賞」もいただきました。受賞については結果論ですが、何よりお客様に喜んでいただき、もう一度観たいと言っていただけたことがうれしいです」と、感慨深く語ります。

 

 「前回上演の頃は、まだ自粛ムードが漂っている雰囲気がありました。そこでお客様は、最後までご覧になって心が温まるような作品を求めていらっしゃるのではないか、という思いから選んだ作品です。派手な演目ではありませんが、今回も新年から温かい気持ちになる作品をお届けできるのはとてもうれしいことだと思います」と、再演に期待を込めます。

 

松緑が語る歌舞伎座「十二月大歌舞伎」、「壽 初春大歌舞伎」

 

今後も講談から歌舞伎へ

 『荒川十太夫』に続き『俵星玄蕃』も、人間国宝の講談師・神田松鯉、そして二人を繋ぎ、松緑とはプライベートでも親交のある神田伯山から、協力を得ていることを明かします。「お二人には、お礼の申し上げようのないぐらい感謝をしております。講談を歌舞伎に移植してよかったね、と喜んでもらえるような作品にしたいですし、落語の三遊亭圓朝の作品が歌舞伎となり、『怪談乳房榎』や『文七元結』など今でも人気を博しているように、ほかの俳優さんがやってみたいな、と思ってもらえるような作品を上演していきたい」と、今後の作品づくりへの熱い思いを話します。

 

 新作歌舞伎のさまざまな取り組みに触れながら「いろいろなやり方で、歌舞伎を観るきっかけを提案していけたらと思っています。その一つとして、僕はなるべく古典に準じた、歌舞伎のセオリーに則った作品づくりを目指して行きたいと考えています」と、自身の目標を掲げました。長男の尾上左近とこの2作品で共演することについては、「幸いにもいろいろな先輩方から可愛がってもらっていますので、本人の考えを尊重しながら、アドバイスしていけたら」と、笑顔で締めくくりました。

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 歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は12月3日(日)から26日(火)まで、「壽 初春大歌舞伎」は2024年1月2日(火)から27日(土)までの公演。歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は、チケットはチケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中、「壽 初春大歌舞伎」は12月14日(木)から発売予定です。

2023/11/17