ニュース

仁左衛門が語る、歌舞伎座「四月大歌舞伎」

仁左衛門が語る、歌舞伎座「四月大歌舞伎」

 

 2024年4月2日(火)から始まる歌舞伎座「四月大歌舞伎」に出演する片岡仁左衛門が、公演への思いを語りました。

その役になることが楽しい

 仁左衛門が夜の部で演じる『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』鬼門の喜兵衛の初役は、昭和46(1971)年の新橋演舞場。土手のお六は今回と同じく坂東玉三郎が演じました。「八代目(坂東)三津五郎のおじさん、初代(市川)猿翁のおじさんの喜兵衛が印象に残っていました」と振り返りながら、キャラクターや体型的に自分に合わないのではと感じ、初めは気が進まなかったと明かします。「でも喜の字屋のおじさま(十四世守田勘弥)が勧めてくださって。やらせていただいてよかったです。お役が広がりましたし、玉三郎さんとのコンビがこのときからスタートしたようなもので、思い出深いお芝居です」。

 

 実際に演じているうちに、「役になること、いろいろな人間になれることが楽しくなってきた」と言います。また、多くの悪役を演じてきた南北作品について、「今上演しているものは、明治以降の、どこか七五調のリズムが含まれた形になっていますが、昔の台本ではせりふがもっとリアルです。(元の)構想を大事にしながら、それぞれの時代に合った舞台がつくられてきたということだと思います」と述べ、その根底にはもともとの構想の素晴らしさがあると、人気の背景を語りました。

 

仁左衛門が語る、歌舞伎座「四月大歌舞伎」

 鬼門の喜兵衛 片岡仁左衛門(©福田尚武)

仁左衛門が語る、歌舞伎座「四月大歌舞伎」

 鳶頭 片岡仁左衛門

 

玉三郎との共演

 夜の部では『神田祭』の鳶頭も勤めます。前回歌舞伎座で上演した際は、コロナ禍による入場制限がありましたが、今回は通常の座席数での上演で、より多くのお客様に、華やかな舞台を楽しんでいただきます。仁左衛門が『神田祭』の鳶頭を初役で勤めた昭和52(1977)年当時も、芸者役はやはり玉三郎でした。「伯父(二世花柳壽楽)が、二人の雰囲気を活かす振りをつくってくださった。日本一のええ男とは思えないですが、正直、ちょっとは自惚れていないと照れくさいですよ」と、笑顔を見せました。

 

 共演する玉三郎は、「一番気心が知れた、客観的に見ても素晴らしい役者さんです」。玉三郎の養父であった十四世勘弥と自分の父(十三世仁左衛門)も仲が良く、「芝居のとらえ方が非常に共通していた」と話し、「だから、お互い芝居に対する気持が通じ合うんです」と続けた言葉のなかに、二人の間の厚い信頼と絆を感じさせます。「いつも玉三郎さんと話しているんです。もう半世紀以上、このコンビを観たいと言っていただけて、本当にありがたいねと」と、しみじみと思いを口にします。

 

常に新しい発見が

 齢を重ねても変わらぬ魅力を放ち続ける仁左衛門。「先輩方の80歳はこんなものではなかったですよ。立派で重みがありました」と、謙遜しながら、「でもまだ伸びしろがあるということかな」と微笑みます。「例えば今月演じている綱豊卿(『元禄忠臣蔵』)。殿様の言葉を拒む者はこれまでいなかったはず。だから(自分に従わない)助右衛門の言動に対し、驚きに似たものがなければならない、と気づくわけです。そうやって少しずつ芸が変わっていきます」と、追究の眼差しが緩むことはありません。

 

 一方で、「自分があまり深く掘り下げすぎても、お客様に通じるとは限らない。思いを込め過ぎても、お客さんがくたびれてしまう恐れもある。その兼ね合いが難しいです」と、冷静な視点も忘れません。「体力的には疲れることもありますが、今まで息が切れていたせりふも、息が切れなくなってくる。それでいて逆に訴える部分は強くなったのではないかなと思う部分もあります」と、ますます意気軒高な様子です。

 歌舞伎座「四月大歌舞伎」は4月2日(火)から26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2024/03/22