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仁左衛門が語る、大阪松竹座『義経千本桜』

仁左衛門が語る、大阪松竹座『義経千本桜』

 

 2024年7月3日(水)から始まる大阪松竹座「七月大歌舞伎」夜の部『義経千本桜』「木の実・小金吾討死・すし屋」に出演する片岡仁左衛門が、公演に向けての思いを語りました。

向上心を忘れず

 歌舞伎三大名作の一つ『義経千本桜』の三段目にあたる「木の実・小金吾討死・すし屋」では、仁左衛門演じるいがみの権太を主人公として物語が展開します。「いがみの権太を初めて演じたのは四国の金丸座でした。そのときは『すし屋』の場だけでしたが、それ以降は必ず『木の実』、『小金吾討死』の場を上演するようにしています。権太の家庭、(息子の善太郎との)親子の愛情をまずはアピールしておく、これは私の大前提でございます」と、自身のこだわりを伝えます。特に、「お客様には簡単に、明瞭に物語を伝えたい」と、強い思いがあるという仁左衛門。「『木の実』では権太が長いこと話していますが、要点がわかるようにせりふを書き換えています。役者は、あれもこれも言いたいという気持ちがあるのですが、そうするとかえって訴えたいことがぼやけてしまう。私は、何をやるにしても単刀直入に、まず核に触れていきます」。

 

仁左衛門が語る、大阪松竹座『義経千本桜』

 

 「関西の型、江戸の型と言いますが、これは“私の型”。父から直接は教わっておりませんが、聞いた話をもとに私なりに工夫しています。『すし屋』の場では河内屋さん(三世實川延若)の型も拝借していますが、文楽も研究しました」と、明かす仁左衛門。「歌舞伎の場合、権太はかっこよく演じますが、人間の泥くささが薄れてきてしまうので、文楽を拝見して、権太が母親に甘えたり、妻子を見送るところなどを研究しました。『小金吾討死』でも(文楽で描かれている)御台と六代君が走って逃げる場面をお見せした方が、小金吾の哀れさや必死さが表れるのではないかと思い、取り入れました」と、説明します。

 

  「これで良しというものは見つからないものですから、常に工夫して、さらに良いものを求める気持ちを捨てないようにしなければいけない。幕が閉まったときにお客様がどれだけ泣いてくださるかが、この芝居の勝負です。演技がうまくても、心が伝わらなければいけないですし、技法ばかりが先行してもいけないと思います」と、揺るぎない向上心をのぞかせました。

 

関西・歌舞伎を愛する会 結成四十五周年記念公演

 今年は「関西・歌舞伎を愛する会」の前身である「関西で歌舞伎を育てる会」が結成されてから、45周年を迎えます。「澤村藤十郎さんの働きかけで始まり、こうして7月に道頓堀で歌舞伎公演が開くことが当たり前になったのは皆様のおかげです」と、感謝を述べます。「夏に大阪で芝居ができることはやはりうれしく、(大阪松竹座での公演は)気分が落ち着きますし、本当にお客様が大勢来てくださるので、安心して芝居ができます。次の五十周年記念公演でも元気に出られるよう、なおいっそう頑張りたいと思います」と、穏やかな笑みを見せました。

 

 最後は次世代へ向けて、「役のとらえ方、表現の仕方、そういうものをしっかり伝えていきたいですね。型は大事ですが、その型が生まれた理由や背景をしっかりとらえてやらないと張りぼてになってしまいますので」と思いを述べ、締めくくりました。

 

 大阪松竹座「七月大歌舞伎」は7月3日(水)から26日(金)までの公演。チケットは6月7日(金)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2024/05/17