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歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 

 2024年6月1日(土)、歌舞伎座「六月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

 昼の部は、『上州土産百両首』から。偶然の再会を喜ぶ幼馴染の正太郎(獅童)と牙次郎(菊之助)。しかし、二人は互いの懐から財布を抜き取って、すりを働いてしまったことを嘆き、これからは真面目に生きることを誓い、10年後の再会を約束します。堅気になった正太郎は勤め先の料亭の一人娘のおそで(米吉)からも慕われていましたが、昔馴染みの金的の与一(錦之助)と一緒に現れた三次(隼人)に強請られます。牙次郎も、隼の勘次(歌六)のもとで岡っ引きとして働いていますが、ドジな性分は変わらず。ついに迎えた再会の日、二人を待つ運命とは…。獅童と菊之助が描き出す、互いを思う気持ちが観客の胸を打ち、客席からは温かい拍手とともに、すすり泣きの声も聞こえました。

 

 続いては、歌舞伎三大名作『義経千本桜』より「時鳥花有里」。悲劇の英雄・義経の旅路を描いた所作事です。幕が開くと、桜が満開の華やかな舞台中央から大和国へ向かう源義経(又五郎)とその家臣・鷲尾三郎(染五郎)が登場します。これまでの流転の日々を嘆く義経でしたが、三郎は、義経の合戦での活躍を物語り励まします。そんな二人のもとへ白拍子三芳野(孝太郎)が白拍子(米吉、児太郎、左近)と傀儡師(種之助)を連れて現れると…。義経たちの旅の慰めにと次々に披露される白拍子たちの賑やかな踊りに、場内が晴れやかな空気に満ちました。

 

 昼の部の幕切れは、六代目中村時蔵襲名披露狂言の『妹背山婦女庭訓』。入鹿の妹・橘姫(七之助)と求女(萬壽)、続いて求女を恋い慕う杉酒屋の娘お三輪(時蔵)が現れます。そこへ娘おひろ(梅枝)の手を引いて豆腐買のおむら(仁左衛門)が登場。仁左衛門の発声で、時蔵の襲名披露と梅枝の初舞台が紹介されます。劇中口上として、時蔵、梅枝が挨拶すると、場内からは盛大な拍手が巻き起こりました。さて、求女を探すお三輪の前に官女たち(歌六、又五郎、錦之助、獅童、歌昇、萬太郎、種之助、隼人)が現れ、お三輪を追い払おうと弄びます。普段は立役を勤める面々が女方を演じるユーモラスな姿が笑いを誘う一方、嬲(なぶ)られるお三輪の哀れさが際立ち、観客をひきつけます。嫉妬に狂うお三輪の様子を見た漁師鱶七(松緑)が突如お三輪の前に立ちはだかると…。六代目として新たな一歩を踏み出した新時蔵に大きな拍手が送られました。

 夜の部は、運命に導かれた“八犬士”の出会いを描く『南総里見八犬伝』「円塚山の場」で幕を開けます。円塚山の山中にやってきた網干左母二郎(巳之助)と庄屋の娘・浜路(米吉)。名刀村雨丸をめぐる争いで浜路が斬られたところに、犬山道節(歌昇)、そして犬村角太郎(種之助)、犬坂毛野(児太郎)、犬川荘助(染五郎)、犬江親兵衛(左近)、犬田小文吾(橋之助)、犬塚信乃(米吉)、犬飼現八(巳之助)が姿を現し、八犬士が集結します。「だんまり」で互いに闇を探りあい、それぞれ趣向を凝らした扮装で美しく決まる八犬士の様子は、まるで動く錦絵のよう。清新な顔ぶれによる華やかな歌舞伎の様式美を味わえる舞台です。

 

 続いては、初代中村萬壽襲名披露狂言、五代目中村梅枝初舞台『山姥』。美しい紅葉の足柄山を舞台にした情趣ある舞踊です。山姥(萬壽)が住む庵を訪ねた山樵の峯蔵(芝翫)。そこへ怪童丸(梅枝)が花道より登場すると、温かな拍手に包まれました。山姥が四季を描く「山めぐり」を舞い、怪童丸が猪熊入道(萬太郎)たちを相手に快活な立廻りを見せます。藤原兼冬(菊五郎)の館では、多田満仲(歌六)、平井保昌(又五郎)、源賢阿闍梨(錦之助)、白菊(時蔵)、源頼光(獅童)、渡辺綱(陽喜)、卜部季武(夏幹)らがそろいます。劇中口上では、菊五郎の発声で襲名、初舞台の挨拶が行われ、万雷の拍手が降り注ぎました。凛々しく花道を去る怪童丸の姿を観客も温かく見守り、門出を寿ぐ舞台にひときわ大きな拍手が響きました。

 

 夜の部の幕切れは、初代中村陽喜、初代中村夏幹が初舞台を踏む『魚屋宗五郎』です。魚屋の宗五郎(獅童)は、妹お蔦の朋輩おなぎ(孝太郎)から、妹が濡れ衣で殺されたと聞き、禁じていた酒を飲んで酔っ払ったまま、女房おはま(七之助)の静止も聞かずにお蔦の奉公先の磯部邸に乗り込み…。このたび初舞台を迎える陽喜と夏幹が勤める酒屋の丁稚二人が花道から登場すると、待ってましたとばかりの大きな拍手が巻き起こり、二人のはつらつとしたせりふが観客の顔をほころばせます。物語の後半では、今回初役で宗五郎を勤める獅童が怒りと悲しみが伝わるせりふを聞かせ、江戸の市井の人々の喜怒哀楽が生き生きと描かれるひと幕となりました。

歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 伝統芸術の漆喰鏝絵による「桐蝶」と、二つの祝幕箱がならび、おめでたい雰囲気にあふれます

 場内の2階ロビーには、萬屋の定紋である「桐蝶」を描いた襲名記念の漆喰鏝絵(しっくいこてえ)、そして舞台上でも披露された二つの祝幕の箱が飾られ、多くのお客様が記念に撮影されている様子も見られました。ぜひこちらにもご注目ください。

 
歌舞伎座「六月大歌舞伎」初日開幕

 

 歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、「六月大歌舞伎」上演記念商品の販売や、大好評のインバウンドコーナー「SOUVENIR JAPAN」を引き続き開催しておりますので、観劇の際はぜひお立ち寄りください。

 

 歌舞伎座「六月大歌舞伎」は、24日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

2024/06/06