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2025年5月、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名披露

2025年5月、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名披露

 

 2025年5月、6月、歌舞伎座で、尾上菊之助が八代目尾上菊五郎を、尾上丑之助が六代目尾上菊之助を襲名することが発表されました。

 来年5月、6月の歌舞伎座で、菊之助が八代目菊五郎を、丑之助が六代目菊之助を襲名、当代の菊五郎は変わらず七代目菊五郎として今後も舞台を勤めます。同時に襲名披露狂言も発表され、5月昼の部『京鹿子娘二人道成寺』で二人の白拍子花子を新菊五郎と新菊之助が、夜の部『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助を、「浜松屋」「極楽寺屋根」では新菊五郎、「稲瀬川勢揃い」では新菊之助が勤めます。また6月は、昼の部『菅原伝授手習鑑』で新菊之助が「車引」梅王丸、新菊五郎が「寺子屋」松王丸を、夜の部『連獅子』では二人が親子の獅子の精を、それぞれ勤めます。

 

2025年5月、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名披露

 

菊五郎という名前はいつも元気で

 「52年間名のらせていただいた七代目菊五郎のまま、歌舞伎人生の幕を閉じたい。それまで一所懸命、勤めてまいりたいと思います」と、切り出した菊五郎。「菊五郎という名前はいつも元気で働いていなくてはいけない」という思いを抱くなかで、2年前に脊椎を痛めたことがきっかけとなり、襲名を考えたと明かします。菊之助に伝えたときの言葉は、「“おめえ、継げよ”と。意外とサバサバした感じでございます」。

 

 新菊五郎に向けて、「今のまま成長してほしい。私ができなかった時代物、世話物、所作、新作と、どんどん挑戦して、菊五郎の名前をもっともっと大きくしてもらいたい」と、期待を寄せ、「私も負けずに病気療養しながら、私の好きな、粋でいなせな江戸っ子の芝居をできるように頑張ります」と、意気軒高です。「菊五郎同士が舞台で共演した際は、七代目、八代目と呼んでいただきたいと思います」と、笑顔を見せました。

 

2025年5月、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名披露

 

歴代に劣らぬ菊五郎に

 菊之助は、「音羽屋先祖代々の重き名跡、菊五郎を襲名のうえは、歴代の菊五郎に劣らぬ役者となれるよう、一所懸命に精進してまいる所存でございます。歌舞伎を懸命に守ってきてくださいました先人たちに、少しでも恩返しができるように、感謝の念を忘れず、古典歌舞伎は言うに及ばず、復活狂言、新作歌舞伎とさらに努力をしてまいる覚悟です」と挨拶。「どのような菊五郎像がつくれるのか、新たなスタートの気持ちで、身が引き締まる思いがしております」と、真摯な面持ちで述べました。

 

 二人の菊五郎が並び立つことについて菊之助は、「七代目が長く元気で舞台に出ることと同時に、八代目がその思いを引き継いでお客様に新しい菊五郎をお見せする。菊五郎の名を絶やさずに重ねていく」という父の志を受け止め、「その決断を支え、全力で八代目を全うしたい」と、心境を語ります。また襲名に向けて、初代の菊五郎からこれまでを振り返ったと話し、「お客様の目線に立ち、お客様に楽しみ喜んでいただける演劇をつくることを歴代菊五郎は考えてきた」と、音羽屋の魂を読み解きます。

 

 そうした初代からの姿勢を受け継ぎ、「菊五郎になっても女方を大事にしたいですし、父が演じてこなかったような時代物の立役、舞踊、世話物にも意欲的に挑戦してまいりたいと思っております」。さらに、「なかなか舞台にかからない新古演劇十種を復活させ、次の菊五郎につなげていくことが一つの目標です」と、具体的な夢にも言及しました。

 

2025年5月、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名披露

 

憧れは二人の祖父

 「父と祖父が名のっておりました尾上菊之助の名跡を、六代目として襲名いたすことになりました。これからもよりいっそうの努力をして、名前に負けない役者を目指します」と、頼もしく挨拶した丑之助。6年前に丑之助で初舞台を踏んだばかりということもあり、「もう少し丑之助のままで演じたい」という気持ちもあったそうですが、「祖父の思いを受け継いで、菊之助を襲名すると心に決めました」と、凛とした眼差しで決意を表明しました。

 

 「祖父菊五郎は世話物のせりふ回しが本当に江戸時代の人物のようですし、祖父(二世中村)吉右衛門は時代物の心情(の表現)が素晴らしくて、尊敬しています。祖父菊五郎、祖父吉右衛門のような俳優になりたいです」と、抱負を掲げます。現在襲名披露狂言として決定している演目のなかで、『連獅子』以外はすべて初役。特に父の菊之助も少年時代に演じた『弁天娘女男白浪』「稲瀬川勢揃い」の弁天小僧菊之助については、「小さい頃からずっと憧れていた役なので、この襲名公演で演じられてとてもうれしい」と、喜びます。

 

 丑之助の言葉を聞きながら、菊五郎が、「本当に、丑之助は成長していますね」と顔をほころばせて孫と顔を見交わす場面も。「菊之助がしっかり厳しく教えています。一所懸命行儀よくやっていると聞くと、本当にうれしいです」。菊之助は、「心情をかたちづくるのが歌舞伎役者の勤め。それはどの役でも同じことが言えると思っています。丑之助にはより心情で演じられるような役者になってもらいたいです」と、息子への熱い思いを伝えました。

 八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助襲名披露興行は、来年の歌舞伎座「五月大歌舞伎」、「六月大歌舞伎」で行われ、さらに大阪松竹座「七月大歌舞伎」、10月御園座「吉例顔見世」、12月南座「吉例顔見世興行」、2026年の博多座「六月博多座大歌舞伎」へと続きます。

 

2025年5月、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名披露

 左より、山根成之松竹株式会社取締役副社長、尾上丑之助、尾上菊之助、尾上菊五郎、迫本淳一松竹株式会社代表取締役会長

2024/06/07