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幸四郎、染五郎が語る、歌舞伎座『裏表太閤記』
2024年7月1日(月)から始まる歌舞伎座「七月大歌舞伎」夜の部『裏表太閤記』に出演の松本幸四郎と市川染五郎が、公演に向けての思いを語りました。
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初演のエネルギーを、今の時代に
「七月大歌舞伎」夜の部では、二世市川猿翁が昭和56(1981)年に初演し、豊臣秀吉と明智光秀の光と影を巧みに織り交ぜて構成された『裏表太閤記』で、幸四郎が3役、染五郎が2役を勤めます。「猿翁のおじ様が初演されたときは、明治座での昼夜通し狂言でした。そのエネルギーを受け継いで、今の時代に上演する意味のある作品につくり上げられたらと思っています」と、まずは幸四郎が抱負を語ります。
作品の印象について、「“太閤記”の世界は、歌舞伎の演目では得意中の得意と言われる世界です。古典歌舞伎の演出をふんだんに盛り込んだ、“THE 歌舞伎”をご覧いただきます」と、幸四郎。「表が秀吉、裏が光秀。豊臣秀吉と明智光秀の二つの柱で展開されるドラマですので、いかに自分が演じる秀吉が光になるべき器であるかという、颯爽たる姿をお見せしたいです」と、自身が演じる秀吉について語りました。
染五郎は、「初演時に、猿翁のおじ様がおつくりになったこの作品のスケール感や熱さはそのままに上演されると思いますので、それについていけるように頑張りたいと思っています」と、意気込みます。「ストーリーはもちろん、立廻りや宙乗りなどの仕掛けの部分で、視覚的に楽しんでいただける演出もたくさんありますので、ぜひさまざまな世代の方に観ていただきたいです。自分自身も熱さで暑さを吹き飛ばすようなひと月にしたい」と、気合は十分です。
鈴木家の親子のドラマ
二幕目では、秀吉による攻城が続いている備中高松城の軍師・鈴木喜多頭重成を幸四郎が、その息子・孫市を染五郎が勤め、親子で重厚な人間ドラマを見せます。「忠義や親子の情愛がドラマチックに描かれている、非常に重要な場面です。この場面を二人で任されたということは、とても大きな責任があると思いますので、作品の太い柱として上演できるように、場面をつくっていきたいと思っています」と、幸四郎。
染五郎は、「古典の演出ですので、義太夫狂言のせりふ回しやテンポ、どのように感情を乗せていくかを研究してつくっていきたいと思っています。役の内面的な部分では、主君に対してまっすぐ忠義の精神を貫いているところや、父であろうと主君に背いて秀吉に寝返ることは間違っていると止めるようなところがあり、しっかりと自分をもっている。その芯の強さは出せたらと思っています」と、自身の役柄を冷静に捉えます。
松本白鸚も出演する今回の公演。「1月の『息子』以来、三代で同じ舞台にそろうので、楽しみです」と染五郎。「今回父が出るのは初演にはなかった場面ということもあり、(白鸚も)拵えにアイディアを出したり、非常に前のめりで、楽しみにしていますね」と、幸四郎が笑顔で話しました。
興奮していただける歌舞伎を
幸四郎は孫悟空として、宙乗りも披露します。「踊りであったり、トリッキーなところがあります。このドラマのなかの一つの筋ではありますけれども、芝居のなかでの華やかな色合いをもつ場面となるように」とにっこり。染五郎の演じる宇喜多秀家も、踊りの場面に出演します。「歌舞伎の古典的なお芝居の仕方と、踊りと、どちらもできないとこの2役は勤まらないと思いますので、父にも教えていただきながらしっかりと稽古をしていきたいと思います」と語りました。
「三幕構成で、序幕に光秀のしっかりとした場面が、二幕目に鈴木家の芝居の場面があり、その最後には本水での立廻りがあります。大詰は所作事で 、西遊記、そして三番叟があり、通し狂言ではありますが非常にくっきりと色が分かれている。凝縮された作品を目指してつくっています。歌舞伎役者と名のっている自分自身にとっても非常に大きなプレッシャーですが、歌舞伎の古典演出を堂々と使い、興奮していただける歌舞伎をつくり上げたいと思います」と、出演者の熱い思いが詰まった『裏表太閤記』に、期待が高まります。
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歌舞伎座「七月大歌舞伎」は7月1日(月)から24日(水)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。