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團子が語る、歌舞伎座『天守物語』
2024年12月3日(火)から始まる歌舞伎座「十二月大歌舞伎」夜の部『天守物語』に出演の市川團子が、公演に向けての思いを語りました。
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図書之助の純粋さ
初役で挑む『天守物語』の姫川図書之助。「いままで演じたことがないタイプの作品、お役です。不安や緊張もありますが、でもやはり楽しみ。ほかの方の舞台も拝見させていただきました。言葉遣いや象徴的な言葉など、せりふがすごく重要な役割を果たしている本作の独特の雰囲気に、自分がどう立ち向かっていけるか。解釈が非常に難しい作品だと思うので、心して挑みたいです」と、意気込みを見せます。
『天守物語』の原作は、富姫を勤める坂東玉三郎から借りた泉鏡花全集で読み、また「感情を一番大切に。自分で考えた自分なりの感情で挑むように」と、玉三郎から言葉をもらったと明かしました。「玉三郎さんの舞台から、いつもひしひしと感情が伝わってきます。作者や作品に対するリスペクトをもち、そして感情を大切になさっているという印象をもっています。これからの稽古でたくさん学んでいきたいです」と、間もなく始まる稽古への期待に胸を膨らませます。
図書之助について、「とにかく純粋で、心が綺麗な美しい青年だと思います。そして自分の身分や礼儀をわきまえている。そう感じさせるせりふがあるんです」と、その人物像を語ります。「(富姫に気に入られた理由も)その純粋さがあるからではないでしょうか。自分と似ているところはあまりないように感じていますが…。ぐっと一つのことしか見えなくなるところが私にもあるので、そういう点が似ていたらうれしいです。しっかり役を解釈し、図書之助の思考を理解して舞台に立てたら、少しは近づけるのではないかと思います」。
自分のなかの変化
今年は2月から10月まで、全国各地でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』を勤めました。「先輩方に助けていただき、いろいろとアドバイスもいただきました」と振り返ります。「役の気持ちをどれだけ保つことができるか。そして、自分の感情をあらかじめつくるだけでなく、さらに舞台の上で相手の感情を受けて変化するという点にも取り組んでいきたいです。それから体力をつけてコンディションを保ち続けたいですね」と、冷静に自分を見つめ、前向きに次々と課題を挙げていきます。
この数カ月の間に、自分のなかで変わったと感じるのは台本の読み方だと言います。「ヤマトタケルの気持ちの動きについて、最初は複雑な論理やプロセスを考えていました。難しければ難しいほどそれが正解のように思っていたところもあって…。でも彼の思考はそんなに複雑ではないのではないか。悲しみなどの感情をそのまま感じる方が、自分にはしっくりきたのです。この経験を活かして、『天守物語』に取り組みたいです」と、目を輝かせました。
熱量を絶やさずに
今回演じる図書之助は、祖父の二世市川猿翁が昭和40(1965)年に勤めています。「祖父と同じ役ということがうれしいです。春秋座のアーカイブに祖父の『天守物語』の写真がありました。祖父がどう勤めたのか考えつつ、台本の解釈に向き合って頑張りたい」と、闘志を燃やします。「祖父は一度も熱量を絶やしたことがない人。パワフルなところが好きでした。澤瀉屋の皆さんも全員熱い方ばかりだと感じています。僕も、熱量だけは絶やさない役者で一生いたいと思います」。
今年20歳になった團子。大学では「西洋と日本の演劇や、異なる時代の音楽など、比較を主とした芸術学を学んでいます」と、舞台出演の合間を縫って勉強にも励んでいる様子を明かし、等身大の若者らしい姿ものぞかせます。今回の舞台に向けて、「新しいジャンルに挑ませていただきますが、感情を大切にしながら、台本と向き合い、自分でお役をしっかりと咀嚼できるように、そしてお客様に楽しんでいただけるよう、精一杯頑張ってまいります」と、真摯な表情で締めくくりました。
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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は12月3日(火)から26日(木)までの公演。チケットは11月14日(木)から、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で発売予定です。
※「澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です