2025年11月2日（日）、歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」の初日が幕を開けました。

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　歌舞伎十八番の『勧進帳』より成立が早く、古風で大らかな趣をもつ『御摂勧進帳』。関守の富樫左衛門（橋之助）と斎藤次祐家（市蔵）の詮議を受ける源義経（新悟）のもとへ遅れてやってきた武蔵坊弁慶（巳之助）。弁慶を初役で勤める巳之助が花道から登場すると、「大和屋！」の大向うと大きな拍手で歌舞伎座の熱が上がります。弁慶が番卒の首を巨大な桶に放り込み、芋を洗うように金剛棒でかき回す“芋洗い”の場面が繰り広げられ、拍手喝采のなか幕が引かれました。

　続いては、舞踊『道行雪故郷』。舞台一面雪景色のなか、そろいの出で立ちで死出の旅路に向かう男女の抒情的な姿を描いています。哀感あふれる様子で登場したのは、大坂の飛脚問屋亀屋の養子忠兵衛（扇雀）と、傾城梅川（雀右衛門）。梅川の身請け金を払おうとして大罪を犯した忠兵衛は、死ぬ前にひと目父に会いたいと、故郷・新口村にたどり着きます。二人の死を思いとどまらせようとする鶴太夫（錦之助）の陽気な踊り、そして忠兵衛と梅川の死を覚悟した踊りに、観客も見入っていました。

　祖父・二世松緑が生み、国宝「鳥獣人物戯画」をモチーフとした舞踊劇『鳥獣戯画絵巻』を、このたび当代の松緑が歌舞伎として初めて上演します。鳥羽僧正（七代目菊五郎）が描くのは鳥獣たちの絵物語。仲睦まじい男蛙（芝翫）、女蛙（萬壽）は蛙の動きを取り入れた舞で観客を引き付け、男狐（萬太郎）を行司に男蛙（芝翫）と男猿（巳之助）が絵巻でも有名な相撲の場面を踊りで見せます。女狐（時蔵、新悟、米吉、左近）をはべらせた猿僧正（松緑）が威勢を張ると…。大勢の鳥獣たちが歓喜の舞をエネルギッシュに舞い踊る群舞は圧巻です。音楽と照明、舞台装置も相まって生まれた幻想的な舞台に大きな拍手が送られました。

　昼の部の最後は、名作者・河竹黙阿弥による『曽我綉俠御所染』「御所五郎蔵」です。“男伊達”の代名詞とも言われる御所五郎蔵（愛之助）と対立する星影土右衛門（松緑）による一触即発のやりとりを甲屋与五郎（幸四郎）が収め、三人の競演に場内が盛り上がります。続く「甲州奥座敷」の場面では、五郎蔵を思うあまり土右衛門になびいたふりをした傾城皐月（時蔵）が、五郎蔵に別れを言い渡す“愛想尽かし”で複雑な心境を丁寧に表し、傾城逢州（米吉）は華やかな存在感を見せながらも、悲劇的な運命へ…。最後は刃を交えんとする五郎蔵と土右衛門が並び立ち、ひときわ大きな喝采が沸き起こりました。

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　夜の部は『當年祝春駒』で幕を開けます。曽我兄弟が春駒売りとなって現れるという趣向に富んだ、顔見世にふさわしく縁起の良いひと幕に、会場も明るい雰囲気です。春駒売りに姿を変えた曽我五郎（萬太郎）と曽我十郎（橋之助）の兄弟が、父の仇である工藤祐経（歌六）と対面します。二人は春駒の芸を踊りに託して見せますが、かたき討ちにはやる五郎が勇み立ってしまう場面も。兄弟は賑やかな馬の踊りを見せ、二人に討たれる覚悟の祐経は後日の再会を約束するのでした。

　続くは、三谷かぶきの新作『歌舞伎絶対続魂（ショウ・マスト・ゴー・オン）幕を閉めるな』。とある劇場の裏側を描いた人気作を、6年ぶりの“三谷かぶき”新作として上演します。伊勢の芝居小屋・蓬莱座では、狂言作者の花桐冬五郎（幸四郎）、座元の藤川半蔵（愛之助）が、人形浄瑠璃で人気の『義経千本桜』を、看板俳優の山本小平次（獅童）が演じる歌舞伎として上演しようとしたところに大騒動が巻き起こり…。上演中の場内は大爆笑の連続。頭取の嵐三保右衛門（鴈治郎）、女方の竹島いせ菊（彌十郎）、そして叶琴左衛門（白鸚）ら俳優も裏方も「幕を開けたら、最後までやり抜く」という信念のもとで奮闘する姿が、まるで歌舞伎座全体が伊勢の「蓬莱座」になったかのような一体感を生み出しました。初日は満員御礼のなかでカーテンコールも行われ、大盛り上がりの打ち出しとなりました。

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　歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、第10回「ねこ展」を開催、各作家作品の商品を週替りでお届けします。ご観劇の際はぜひお立ち寄りください。

 　歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」は、26日（水）までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。