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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」初日開幕
2025年12月4日(木)、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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▲超歌舞伎 Powered by IOWN『世界花結詞』前列:初音ミク/後列:中村獅童
松竹創業130周年の年の瀬を華やかに飾る今月、第一部は、「超歌舞伎 Powered by IOWN」『世界花結詞(せかいのはなむすぶことのは)』です。俳優陣一同がそろう豪華なだんまりとなった後、舞台に残る袴垂保輔(獅童)は秘術の書を手に、花道を駆け抜けます。続く神泉苑の宴席の場では、舞姫(初音ミク)が艶やかな踊りを披露。その見事な踊りに心奪われる源頼光(獅童)ですが、舞姫の正体は…。NTTの最新技術を用いた超歌舞伎おなじみの分身の術はもちろん、早替りや迫力あふれる立廻りなど、超歌舞伎ならではの舞台に観客は感嘆の息をもらします。
続いて、碓井貞景丸(陽喜)と坂田公平丸(夏幹)の二人がすっぽんより登場する場面では、溌剌としたせりふと息の合った立廻りで観客を魅了します。クライマックスでは、初音ミクの人気曲とともに、超歌舞伎が生み出す舞台と客席の一体感が劇場を包み、無数のペンライトが輝くなか、オールスタンディング状態に。獅童は 「これが超歌舞伎!また会いましょう!ありがとう!」と熱いメッセージを送り、割れんばかりの拍手と熱狂に包まれるなか、幕を閉じました。
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▲『丸橋忠弥』尾上松緑
第二部の幕開きは、幕府転覆を狙う浪人を描いた『丸橋忠弥』。江戸城外濠端にある茶屋では、大酒呑みの槍の名手丸橋忠弥(松緑)がすっかり酔っぱらった様子。実は、幕府転覆の企みに加担している忠弥は隙を窺っては濠に石を投げ込み水深を計ります。忠弥が通りかかった老中松平伊豆守(中車)を横目で捉えると、一瞬で緊張感のある空気が漂います。二幕目は、女房おせつ(雀右衛門)のいる忠弥の住まい。同志に本心を話す忠弥の姿を観客も固唾をのんで見守ります。続く「捕物」では、大勢の捕手を相手に奮闘する忠弥でしたが…。戸板や縄などを使う圧巻の大立廻りに観客は大きな拍手を送りました。
▲『芝浜革財布』左より、寺島しのぶ、中村獅童
続く『芝浜革財布』は、落語をもとにした夫婦の心温まる世話物。大酒呑みで怠け者の魚屋政五郎(獅童)は、ある朝大金の入った革財布を浜で拾い、すっかり上機嫌。大工勘太郎(中車)、錺屋金太(梶原善)をはじめ、仲間たちと酒盛りをします。小気味良いテンポの会話に、客席のあちこちから笑いが。一方、酔いからさめた政五郎に女房おたつ(寺島しのぶ)は革財布を拾ったのは夢だと話します。更に自分の身を売ろうとするおたつの献身的な姿を見た政五郎は…。江戸っ子気質な政五郎、情愛あふれるおたつがみせる江戸の粋な人情噺に客席が温かく包まれました。
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▲ 与話情浮名横櫛』左より、坂東玉三郎、市川染五郎
第三部は『与話情浮名横櫛』「源氏店」で幕開きです。和泉屋多左衛門(権十郎)の妾宅に住むお富(玉三郎)のもとへ、かつて愛した男、与三郎(染五郎)が金をたかりに訪れます。「しがねえ恋の情けが仇」で始まる、心地よい七五調の長ぜりふは聞きどころです。湯上りの艶やかな色気をまとうお富は稀代の美しさ。与三郎も、零落しながら若旦那であった品の良さがどこか漂い、二人の際立つ存在感に、観客は思わず見入ります。二人の息の合ったやり取りが会場を魅了し、割れんばかりの拍手が響き渡りました。
▲『火の鳥』左より、坂東玉三郎、尾上左近、市川中車、市川染五郎
「十二月大歌舞伎」の締めくくりは、今年8月に歌舞伎座で初演され、早くも再演を迎えた話題作の『火の鳥』。病気の大王(中車)は、永遠の生命をもつ火の鳥の捕縛をヤマヒコ(染五郎)とウミヒコ(左近)に命じます。たどり着いた遠国の庭で、イワガネ(新悟)の言葉に従う二人の目前に、火の鳥(玉三郎)が現れ…。衣裳や鬘、照明、映像、舞台装置、音楽など、『火の鳥』ならではの世界観が広がる幻想的な空間に、客席もすっかり引き込まれます。火の鳥が歌舞伎座の空間に舞い上がるクライマックスに万雷の拍手が起こるなか、初日の幕となりました。
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歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、期間限定で「老舗店フェア」を開催、老舗店の人気商品をお届けします。ご観劇の際はぜひお立ち寄りください。
歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は、26日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。
