―― 学生時代を振り返っての思い出を教えてください。
学校生活は、とても恵まれた環境でした。舞台があって早退することがあっても、皆が頑張ってねと応援してくれていたのが、本当にありがたかったなと。だからこそ両立を頑張ろうと思いました。逆に両立をしたことによって、学校と、お芝居やお稽古のスイッチの切り替え方も身に付けることができたし、相互にいい作用がありました。大変でしたけれど、でもやってよかった、頑張ってよかったなと思います。友達は、今でも舞台を観に来てくれます。ご飯に行ったり、一緒にでかけたりもしますよ。
―― 歌舞伎俳優のお仲間や先輩とは、どのようなお話をされるのでしょうか。
ご飯に誘っていただいてご一緒することもあります。芝居の話を深くすることもありますし、全然くだらない、関係ない話をすることもありますし…ここでは言えないような話が飛び出すこともあります(笑)
―― 幸せを感じる瞬間はどのようなときですか。
なんだろう…。寝ること、お風呂に入ること、のんびりすること、でしょうか。それから音楽を聴いたり、ご飯を食べたり、あとはパンダが好きなので、パンダを見たり…。 音楽は、流行りのものから昔の曲まで、なんでも聞きます。
―― ここぞというときに食べたいものは何でしょうか。
いつ、ということに関わらず、好きな食べ物はお蕎麦です。麺類全般大好きです。もう、お蕎麦がないとちょっとしんどいです(笑)。毎日でも大丈夫。まだ僕が小さい頃、何が食べたいか聞かれると、必ず「お蕎麦」と答えていたので、そのうち聞かれなくなるということがあったくらい、昔からお蕎麦が大好きでした。
―― 座右の銘があれば、教えてください。
ひとつは「花と夢を忘れぬこと」。これは 歌右衛門の大旦那(六世歌右衛門) の言葉です。それから、「人事を尽くして天命を待つ」。あのときもっと準備しておけばよかった、と思うことの方が多いので、戒めを込めて…。やれる限りのことをやった、後はもう神様次第だって思えるくらい、頑張っておくということだと思うんですよね。
―― 歌舞伎以外で、よくご覧になる舞台芸術は何でしょうか。その魅力も教えてください。
宝塚歌劇や、ミュージカルを観に行きます。五感で楽しむというか、宝塚の、劇場の雰囲気、音楽、見た目の美しさ、きらびやかさを楽しむ、というところが歌舞伎と共通しているかもしれないですね。総合的な芸術として、エンタテイメントとして、楽しく観ています。
―― 歌舞伎美人の読者、ファンの皆様へひとこと、お願いいたします 。
歌舞伎がもともとお好きでご覧になっている方、これから歌舞伎を観てみようと思われている方、いろいろな方がいらっしゃると思います。まだ(歌舞伎を)観たことがない方には、だまされたと思って、一度観に来ていただきたいです。古くて難しい、敷居が高いと感じられるかもしれませんが、内容は、今を生きていらっしゃる方たちにも、楽しんでいただけるものをやっています!
そして、ずっと歌舞伎を応援してくださっているファンの皆様には、これからも観続けていただきたいですし、ぜひ周りの方たちにも、歌舞伎の魅力を広めていただいて、一緒に楽しんでいただけたら、ますますいいなと思います。
今、多彩なジャンルの歌舞伎がありますが、どれも楽しいと思っていただけるように、我々も頑張ります!
中村莟玉
なかむらかんぎょく。高砂屋。1996年生まれ。2005年1月国立劇場『御ひいき勧進帳』の富樫の小姓で森正琢磨の名で初舞台。2006年4月、歌舞伎座『沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)』の小姓神矢新吾、『関八州繋馬』の里の子竹吉で中村梅丸を名のり、中村梅玉の部屋子披露。2019年11月、中村梅玉の養子となり、歌舞伎座『菊畑』の奴虎蔵実は源牛若丸で初代中村莟玉を名のり披露。12月の南座では、『戻駕色相肩』の禿たより、『釣女』の上臈、『越後獅子』の角兵衛獅子を勤める。