【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
芸道:独習の礎となる祖父と父の台本群
2007年に史上最年少の16歳で大曲『鏡獅子』を踊り、2009年は『封印切』の梅川を好演。2010年は祖父・坂田藤十郎がそれまでほぼ一人で演じてきた『曽根崎心中』のお初に大抜擢されるなど、ひときわ注目を集めた壱太郎さん。現役の大学生として学業との両立をはかりながら、どう歌舞伎に向き合い、何を感じているのでしょうか。
まずは「芸に向かうひたむきな横顔」を探る手がかりとして、歌舞伎に関する大切な品々を見せていただきました。
―どんな風に勉強をされるのですか。
お初のお役をいただく前、2009年4月に歌舞伎座で祖父がお初をやっているのですが、そのときに本気で全部を覚えてみようと思って、何度も何度も舞台を見に行きました。台本には細かな動きなどは書かれていませんから、舞台を見て気付いたことを台本にどんどん書き込んだりして、芝居の詳細を徹底的に追ってみました。昨年3月に実際に自分が演じたときには、それが大変役に立ちました。 ―『妖異有馬猫(よういありまねこ)』の台本もありますが、昭和42(1967)年6月上演(※)という古いものですね。 2009年6月に『怪異有馬猫』のお藤の方を演じさせていただいたのですが(大阪松竹座「喜寿記念 坂東竹三郎の世界」)、ここにある台本の公演以来、ほとんど上演されていなかった作品なので見たこともありませんし、映像も残っていませんでした。ビデオなどがあれば、あるひとつの正解が実体として目に見えるのですが、それがないわけです。それで、なにか手がかりになるものがないかなと探してみたら、家からこの古い台本が出てきました。 見たこともなく、ビデオもない作品に取り組むことはあまりないので、どうなるかなという気持ちもありましたが、通常の公演よりもお稽古が多くありましたし、座頭である(坂東)竹三郎さんがとても丁寧に教えてくださいました。台本から自分で考えながら立体化していく過程は、難しいけれど楽しくもありました。 ―こちらのノートパソコンも歌舞伎にまつわる品でしょうか? パソコンは主に大学で使っていますが、歌舞伎のデータもたくさん入っています。舞台写真などもスキャンして取り込んでおけば、いつでも見られます。この前の永楽館の公演(2010年11月)では、口上のセリフをパソコンに入力しながら作りました。楽屋でもよくパソコンに向かっています。 ※上演時の外題は『有松染相撲浴衣(ありまつぞめすもうゆかた)』(東横ホール)。
―かわいらしい公時(きんとき)さんですが、想い出などはありますか? あまり記憶がないのですが、この熊は(中村)亀鶴さん(当時は中村芳彦)で、亀鶴さんが熊になるのが大好きだったことは覚えています(笑)。公時の役は小道具のまさかりを持つのですが、それを記念にいただいたようで今でも家にあります。 化粧(かお)は鴈乃助さんがやってくださっていましたが、子どものころは白粉を塗られるのが苦手でした。白粉は自分の間(ま)で塗りたいので、小学生の終わりのころからは自分でするようになりました。 |
芸の眼差し、遊の素顔
バックナンバー
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第4回 中村壱太郎
役と同じ19歳で『曽根崎心中』のお初という大役に挑み、見事に演じきった中村壱太郎さん。歌舞伎でもパソコンを駆使し、大好きな"漫画"の話に目を輝かせる20歳の大学生、誰もが認める好青年の登場です。
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第3回 中村梅枝
ほのかな艶を含んだ娘役など若女方を中心に、多くの舞台で活躍されている中村梅枝さん。ダーツやゴルフに熱中していること、由緒ある鏡台への思い入れ、愛犬ランちゃん・ラブちゃんのことなど、素直にいろんな気持ちを語っていただきました。
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第2回 中村種太郎
凛々しい若手立役として期待を集めている中村種太郎さん。今年9月からは屋号が萬屋から播磨屋となり、今後の舞台での活躍がますます期待されます。写真がご趣味という種太郎さん。赤いトイカメラで、どんな写真を撮られているのでしょう...。
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第1回 尾上松也
美しい若衆、若女方として活躍している尾上松也さん。お持ちいただいた"大切な品"を手がかりに、「芸に向かうひたむきな横顔」、「ひとりの青年としての素顔」に迫りました。プライベート写真も公開中です!