
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
![]() 芸道:九世三津五郎ゆかりの隈取の筆
ここ数年、巳之助さんの歌舞伎へ出演はめきめきと増えています。特に昨年は重要な舞台が多く、10月には追善狂言として父の坂東三津五郎さんとともに『連獅子』(新橋演舞場)で狂言師左近後に仔獅子の精を演じ、気迫のこもった親子の舞が話題となりました。また、7月には曾祖父にあたる八世坂東三津五郎が作り上げた舞踊劇『馬盗人(うまぬすびと)』を好演。客席を大いに楽しませてくれました。
―歌舞伎の道に迷われた時期があったそうですが、いつごろ覚悟を決められたのですか? 17~18歳のころです。自分でも不思議なんですが、銀座あたりを歩いていて、ふと気持ちが固まったんです。本当に、「そうだ!」という感じで。そのころは、父に許しをもらって歌舞伎の舞台に全然立っていなくて、バイトをしたりバンドをやったりしてたんですけど、それで気持ちがリセットできたことも大きいのかなぁと。それからは、まったく気持ちがぶれなくなりましたね。 ―昨年は充実した舞台を重ねられたと思いますが、特に印象に残った演目は? 10月の追善は、やはり特別でした。それに加えて言うなら、三津五郎家ゆかりの演目『馬盗人』でしょうか。笑いを誘う面白い趣向の演目なのですが、お客様がとても楽しまれているのが舞台の上にも伝わってきて、本当にうれしかった! 僕はまだまだ経験が浅いので、こういうユーモラスな演目ほど肩に力が入ってしまうんです。一緒に舞台に出ている父からは「ならず者すぎて、愛嬌がないよ」などいろいろアドバイスをもらいました。どれだけ父の理想に近づけたかはわかりませんが、1カ月間、じっくり取り組むなかで、自分自身の持ち味について少し方向性が見えたような気もしています。いろんな意味で、思い入れのある演目でしたので、今年の『かぶき手帖2011年版』のプロフィール写真には、このときの舞台写真を使っていただいています。 ※2010年10月、新橋演舞場にて「七世坂東三津五郎五十回忌 八世坂東三津五郎三十七回忌 九世坂東三津五郎十三回忌 追善狂言」として『連獅子』『神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり) どんつく』が上演された。 |
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―かわいらしいお猿さん、そして『蘭平物狂(らんぺいものぐるい)』ではお祖父様、お父様と並んでの劇中口上があったのですね。 初舞台のときは祖父の楽屋に入れてもらっていて、とにかく楽しかったという印象が残っています。自分では記憶がないのですが、揚幕が開くときのチャリンという音を聞くと、すごくテンションが上がっていたらしいです(笑)。 父は、たくさんの演目に出ている上に自分の息子が初舞台ということで、とてもピリピリしていました。「お父さん、すごく怖いな」と幼心に感じた記憶があります。その分、祖父はとても優しくて、この口上の写真を見ても、本当に嬉しそうですよね。一方、真ん中の父はすごい形相!(笑) でも、もしも自分が父の立場だったらと想像すると、かなり神経質になると思います。こうして振り返ってみると、祖父と父に見守られた、幸せな初舞台だったと思います。 |
芸の眼差し、遊の素顔
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