歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



大人の選び方、若い人の選び方
桜の花びらを散らした水色の訪問着は作家物。金糸をたっぷりとった袋帯を合わせ、大人のお出かけきものに仕上がっています(①)。一方、優しい色合いの桜柄にお雛様の柄を配した訪問着。こちらは雪輪の帯を合わせて可愛らしい雰囲気です(②)。大人っぽい方は、自分の顔映りのよい色を選ぶのが第一のポイント。若い方の場合は、躍動感を感じさせる柄が素敵です。いずれも、季節感を少し先取りしてきものの柄に託しています。

 

華やかさと品を心得た小物合わせ
きものと帯が決まったら、小物選びです。同じ帯でも帯締、帯揚との組み合わせ次第で、品格はぐっとアップするもの。ボリューム感、質感は実際に帯と合わせてみてわかるものです。チョイスがいろいろ用意されているのも、レンタルきもののメリット。選択肢が広がると、思わぬコーディネイトにはっとさせられることがあります。プロの力が発揮される場面です。
写真は①~③が若い人向け、④~⑥は年齢を重ねた方にこそおすすめしたいコーディネイト例です。

 
お出かけきもの選びのポイント
 いざ、お出かけきもの実践編です。まずは、きもの選びのポイントから。人それぞれで好みがあるでしょうし、似合うものも違ってくるでしょう。でも、なるべく品よく――。これは誰もが願うところ。その大きな鍵となるのが色味です。

 実際にきものを身体に当ててみて、自分の顔映りのよいものを選ぶのが一番ですが、帯や小物と合わせてみたとき、色が多く入っている印象のきものは避けたほうがいいでしょう。全体がワントーンに見える、これが上品に見せるポイントです。

 といっても、地味な色味や柄の少ないものをということではありません。よく見ると実は様々な色が使われている、けれど全体の印象はワントーン。これこそが“上品”なのです。無限とも言えるほど色は様々ありますが、これを多く使い、けれど品よく見せる。正倉院の宝物などを見ればわかるように、それこそが文化なのです。ちょっと気合を入れて「そうよ、私は日本文化をまとうのだわ」というくらいの意気込みで選んでみてはいかがでしょう。

品よく個性的を目指すなら
 劇場にはきもの姿の方も多いだろうから、少し個性が光るものを着たいと思う方もいらっしゃるでしょう。ならば、作家ものを選んでみては? 作家が描いたきものは、一点ものも少なくありませんし、また作家性が表れたユニークな柄のものも多くあります。

 そのようなきものをプロの目でコーディネイトしてもらえば、品のよい個性派きもの姿ができ上がること間違いなし。豊富なきものをストックしているレンタルきものなら、有名作家の作品も用意されているはずなので、ぜひ相談してみてください。

観劇のための着付のコツ
 さて、いざ劇場へとなると気になるのが着付のこと。レンタルきものならば、ベテラン着付師が万全の用意で迎えてくれます。

 ご観劇の際は、ある程度の時間、椅子に座りっぱなしになります。また、客席はスペースも限られますから、足元もあまり自由になりません。そういう環境を前提とした着付のポイントは、まずは帯を少し緩めにしておくこと。これで長時間、着ていても辛くなりません。

 さらに、帯枕の位置も大切です。椅子の背もたれに背中を預けることになりますから、高い位置に帯枕があると、胃が圧迫されて苦しくなりかねません。少し低めにしておくとずいぶん楽になります。

 それから、上前は少し多めに取っておくこと。座っている間、ずっと膝をぴっちり合わせておくのは少々辛いものです。拳一つぶんくらい膝間を空けておくとかなり楽になるのですが、その姿勢をとっても前がはだけないように、上前を多めにとっておくようにします。

 そして、歌舞伎座には花道があります。あら、○○さんの登場ね、と後ろを振り返る席に座られる場合、衿元がぴっちりしていると首にすれてしまうかもしれません。ですから、衿元も少し緩めに合わせるように着付けましょう。

 以上のような心配りのある着付を、すっきりとした着姿に、着崩れしにくい着付にしたいとなると、一度はプロの技を体感しておくのもいいのではないでしょうか。レンタルきものやプロの着付を上手に利用して、楽しい観劇の思い出をつくってください。
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長沼静きもの学院

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