歌舞伎いろは

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江戸時代からあった「変わりそば」 その中でも一番馴染みのあるものは?


白くてかわいらしい、そばの花。開花時期は秋。

お茶どころ、静岡の茶畑。

香りも彩りも上品な茶そばは豪華な料亭料理の一品に。

 歌舞伎座外の「歌舞伎そば」では、「ざるかき揚げそば」が一年を通して人気が高いそうですが、地下食堂「花道」では、ざるそばや冷たいそばがよく出るのは暖かい時期。夏には、卵焼き、海老、なめこや大根おろしなどをのせた冷たい「ちらしそば」が人気なのだそうです。また、「花道」では天ぷらのネタを変えて季節感を演出する工夫もしています。ちなみに2月のおススメは、“春を告げる魚”と言われる「シラウオの天ぷらそば」です。

 天ぷらや具でそばに変化をつけるのもいいですが、そばそのものに彩りと味わいを加えた“変わりそば”もいいものです。変わりそばは、江戸の中期ごろに考案されたと言われ、『料理山海郷(りょうりさんかいきょう)※』という文献に百合切り、紅切り、海老切りなどの記述があります。各地でさまざまな“変わりそば”が生まれたようですが、今でも私たちに一番馴染みのあるものは「茶そば(茶切り)」でしょう。

 しかし、茶そばは抹茶の使い方が難しく、強いと上品さに欠け、弱いと風味が出にくいもの。今回ご紹介する「セコムの食」の「銘茶そば」は、高級料亭に茶そばを提供している製麺工場の特注品です。お茶どころ静岡県の高級抹茶の風味を損なわないよう丁寧に生地を仕込み、約2日間ねかせて味も喉ごしも卓越した麺が完成しました。抹茶のほのかな苦みと小麦の甘さが、みごとに調和しています。

 茶そばの中でも、「お茶」の特性を知り抜いた人々が作るお茶どころの茶そばは、さぞや風味がよく、格別のおいしさが期待できることでしょう。

※『料理山海郷(りょうりさんかいきょう)』
1749年(寛延2)刊、著者は博望子(はくぼうし)。諸国の名物珍味が書かれている、江戸時代の地方料理書

 

歌舞伎座の「食」

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