歌舞伎いろは

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これが漁師のくいもんじゃぁ 魚と塩のみで作る、旨みが凝縮したじゃこ天

 大名の人事異動から派生した文化交流がルーツともいわれる「じゃこ天」を、江戸の昔と同じ、添加物なしで手作りしている若き職人がいます。愛媛県八幡浜市「鳥津蒲鉾店」店主、鳥津康孝さんがその人。

 父親が営む小さな蒲鉾店の長男として生まれた鳥津さんは、父親が作る蒲鉾やじゃこ天ができあがるのを心待ちに来店する人たちの、満足そうな笑顔を見て育ちました。子供の頃から将来の夢は「蒲鉾屋!」だったという彼は、大学時代に地元・八幡浜を離れ、改めてこの地の魚の美味しさを実感したといいます。卒業と同時に父について職人の道へ入り、子供の頃からの思いと天性の勘の良さで職人の腕を磨いていきました。そして15年。鳥津さんの中に次なる目標が生まれました。「魚そのものの旨みが凝縮したじゃこ天、いうならば原点のじゃこ天を作りたい」。

 周囲が呆れるほど熱中した試行錯誤の1年。そうしてできあがったのが、江戸時代もかくや、と思わせるじゃこ天「これが漁師の食いもんじゃぁ」です。ホタルジャコと塩以外は一切使わない、まさに原点のじゃこ天は、魚の旨みと栄養がぎゅっと詰まった独自の味わいであることはもちろん、子供たちが安心して口にできる、鳥津さんの思いがこもった逸品です。

 愛媛県八幡浜市「鳥津蒲鉾店」

魚と塩のみで作る、旨みが凝縮したじゃこ天

生産者の鳥津さん

生産者の鳥津さんからのメッセージ
当店の製品を食べたお客様が、「あぁ、これは鳥津さんが作ったものですか。それなら安心して食べられます。」この言葉をかけてもらうのが、私の最高の幸せです。お客様との信頼の絆を大切に美味しい製品を作り続けます。

「鳥津蒲鉾店」2代目店主の鳥津康孝さん(右)。

左/ホタルジャコは、毎朝セリで仕入れ。鳥津さんの目利きは抜群。右/八幡浜漁港で水あげされた、じゃこ天の原料となる鮮度抜群のホタルジャコ。

左/木枠を使ってひとつひとつ、手作業で素早く仕上げていきます。 右/一番搾りの菜種油のなかをゆったりとくぐらせて「じゃこ天」の完成です。


歌舞伎「食」のおはなし

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