歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



五島列島の健やかな太陽と土と人が育んだ懐かしく優しい甘みが口に広がる「かんころ餅」

 長崎県・五島列島の伝統食「かんころ餅」は、茹でて干した甘藷(さつまいも)と餅米をつき合わせて作ったものです。火であぶって口に運ぶと、さつまいもの自然な甘さが広がり、もち米のもちもち感も絶妙。素朴で優しい味わいの逸品です。

 海から風が吹きつけ、土壌は火山灰が混じって水はけがよく、良質な甘薯が栽培できる五島列島の北部、上五島。秋、この地で大切に育てられた甘藷は、ご夫婦で甘薯を育てている古川さんをはじめ生産農家の方々の手で、丁寧に掘り上げられます。そして皮がむかれ、手がんなでスライスされ、茹で上げられ、干されます。

 手間暇をかけてできあがるかんころで、昔ながらのかんころ餅製造に取り組んでいるのが、長崎県佐世保市の菓子職人、高木さん。高木さんが手掛けるかんころ餅には、「美しい五島の風土や、生活から生まれた素朴な美味しさを、そのままに伝えたい」という、高木さんと生産農家の皆さんの熱い想いが、ぎゅーと詰まっています。

長崎県佐世保市で和菓子店を営む2代目、高木龍男さん

「かんころ」とは、この地方で茹でて干した食材のこと。無農薬、無化学肥料の干し芋で作ったかんころ餅は、ほの甘くて懐かしい味

左:丁寧に掘り上げられる芋上:五島の食文化を守ろうという高木さん(中央)と、その良きパートナーである干し芋生産農家の古川さんご夫妻


歌舞伎「食」のおはなし

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