歌舞伎いろは

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現代に伝わる江戸の味「炊き込みご飯」

 土鍋で米を「煮る」調理法から、現代と同じ「炊く」調理法に変わったのは、分厚い蓋のある羽釜(はがま)が登場した江戸の中期。蓋を開けるとふぁ?と立ち上がる湯気の中に、ツヤツヤと輝く炊きたてのご飯……、現代の私たちと同じように白飯を江戸っ子も食べていました。

 よく「江戸っ子は銀シャリ好き」といわれます。でも江戸っ子と銀シャリを結びつけるのは、厳密にはまちがい。実は「銀シャリ」は20世紀に誕生した言葉なのです。「シャリ」とは仏舎利(ぶっしゃり)、つまり仏様の遺骨のこと。第二次世界大戦による食糧難の時代、品薄で高価な白米のご飯が、それほどに尊かったということでしょう。とはいえ「江戸っ子は白飯好き」では、なんだか格好がつかない気もしますが……。

 現代ではごく普通の感覚の白いご飯に対して、ほのかにごちそう感が漂うのが「炊き込みご飯」。奈良時代、ごちそうどころか収穫量が少ないお米を節約するために粟(あわ)などの雑穀を増量材として混ぜたのがルーツです。それが日本食の文化が花開く江戸時代に、エンドウ飯、ネギ飯、タケノコ飯、鶏飯、カキ飯など風味や季節感を楽しむ料理に発展。現代に繋がっています。

 江戸前の炊き込みご飯といえば、アサリを炊き込んだ「深川飯」が有名です。もともとは、忙しい深川の漁師が船の上でアサリの味噌汁を白いご飯にぶっかけて、ササッとかき込んだのがはじまり。ワイルドで庶民的な「ぶっかけ」も新鮮なアサリのダシが染みた「炊き込み」も、さっそく今夜にも美味しいお米で試してみたくなる江戸の味、というわけです。


歌舞伎「食」のおはなし

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