歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



飴色のしずくにまろやかな甘みと生姜の清涼感が凝縮 気持ちも体もホンワカ温まる「あわせしょうが」

 日本有数の生姜の生産地、高知県で最もメジャーな品種「土佐一」。穏やかな味と香りが特長のこの「土佐一」を100%使って生姜と砂糖だけで、水を一切加えずに炊きあげる『生姜湯の素』が、今回ご紹介する「あわせしょうが」です。

 土佐一はスライスしたあとすり潰します。硬い生姜から絞り汁を取り出すのは、根気と力のいる作業。やっと取り出した絞り汁を丁寧に漉してひと晩ねかせると、雑味が抜けてまろやかな爽やかさになるのだそう。そこに砂糖とあわせて、じっくりと炊きあげます。こうしてできあがった「あわせしょうが」は、まるで蜂蜜でも入っているかのようにまろやか。甘みのなかに生姜独特のさわやかな辛さが香り立ちます。スーと抜けるような清涼感は、釜に浮き上がる泡の加減や周囲に広がる生姜の香りの強弱などを、的確に見きわめて炊きあげる職人技の賜なのです。

 そのまま薄めて冷やし飴や生姜湯にすれば、昔ながらの庶民の味。ソーダで割ってジンジャーエールに、紅茶やミルクに入れてもOK。魚の照り焼きや、豚の生姜焼き、煮物や唐揚げのかくし味など、お料理にも大活躍してくれます。

左:高知県須崎市で「あわせしょうが」をつくる。左は吉本茂さんと妻の満智さん、右が中平甲さんと妻の正衛さん。
右:生姜は地元高知の土佐一だけを使用。毎日使う分だけを貯蔵庫から運びます。

次々に浮いてくるアクを丁寧にながら一釜ごとじっくりと炊きあげる。夏は工房内は40℃以上の暑さになる。

無添加で一釜一釜手作りの真心を込めた作業。瓶づめもすべて手作業で。


歌舞伎「食」のおはなし

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