歌舞伎いろは

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その昔、お饅頭のあんこはしょっぱかった?

 日本に中国から甘蔗(かんしょ。サトウキビのこと)の栽培法が伝わったのは、1610年。「鍵屋の辻の決闘」が起こった寛永11年(1634年)の頃は、砂糖はもっぱら輸入品で、流通はごくごくわずかなものでした。甘い餡(あん)が入ったお饅頭が必ずしも贅沢品でなくなるのは、江戸時代も中?後期、18世紀のこと。砂糖の国産化が進んだ吉宗の時代あたりです。

 ところで、餡といってまず思い浮かべるのは、あずき餡でしょう。でも、初めは中国から伝わった「あん」、肉や野菜で作られたもの、つまり中華の肉まんの中身の様な物でした。その後、甘く炊いたあずきの餡が登場する紆余曲折には、諸説あります。

 安永元年(1772年)、江戸小石川の貧しい寡婦(かふ)のおたよ(お玉)が売り出して評判を呼んだ大福餅も、当初は塩餡でした。砂糖入りの餡に変え、江戸庶民が絶賛する空前の大ヒットとなるのは、さらに10数年後。ようやく甘い餡が庶民の味となったのです。

 庶民に美味しいなら、お殿様にも美味しいのは道理。全国各地に名物饅頭があるのは、饅頭好きな大名の参勤交代がきっかけだと言われています。ところでお饅頭はその製法で、大まかに「蒸し」と「焼き」に分けることができます。例えば、「利休饅頭」や「酒蒸し饅頭」「田舎饅頭」は蒸し饅頭、「みつまん」や「栗饅頭」は焼き饅頭です。一般的に焼き饅頭の方が高カロリーな傾向にありますから、ダイエットを心がけているときは、蒸し饅頭の方が心おきなく食べられそうです。



歌舞伎「食」のおはなし

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