歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


 
【竈(かまど)】は別名「へっつい」「くど」と言われました。竈神や荒神様が住む大切な場所であり、毎日の火の世話は気の抜けない仕事でした。  
 
藁や萱の屋根は火災の危険性が高いものです。牡蠣殻を並べたり土を塗って防火に努めました。吉宗は庶民に瓦葺きを許しますが、長屋の多くは火事の後も再建しやすい板葺きでした。

其の一 長屋暮らしでも一家にひとつ

 江戸の朝、通りには物売りの声が響き、長屋の台所では米の炊ける匂いがしてきます。

 世話物のシーンでもよく登場する長屋は通常ワンルーム、畳敷きの部分は4畳半程度でした。井戸やトイレは共同です。長屋の煮炊きといえば外で七輪(しちりん)といった光景も想い浮かびますが、ちょっと気のきいた長屋なら台所だけはそれぞれにありました。

 台所の主役である竈(かまど)は、土間に置く方が安全ですが、スペースがなければ畳のすぐ脇の板の間に置かれました。畳に座って調理する形になった竈も残されています。竈で起こした火は、ずっと横について調整しなければなりませんから、座っていられるのも楽だったかもしれません。

 壁や屋根も含め木や藁が使われている長屋ですから、火の始末はとても大切でした。火の扱いがおろそかになりがちな独身者の部屋は、大家さんが鍵を預かり留守中に点検して回りました。それでも火災は日常茶飯事というのが江戸の町でした。

くらしの今と昔

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