歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


江戸時代の食事は、大名のような身分の高い人でもない限り一汁一菜が基本です。
箱膳は町民も農民もめいめい1つずつ持ち、食事の後はさっと片づけました。場所を節約できる便利なアイテムです。

其の二 箱膳で一汁一菜

 江戸の長屋で人々が食事をする時は、箱膳を使いました。木箱の蓋を返し箱に載せると小さなテーブルになります。その上に、いつもは箱の中に収めている器を載せて食事をしたのです。家族ひとりひとりに箱膳があり、使わない時は重ねて収納しました。つまり箱膳は、ポータブルな食器棚兼食卓であり、スペースを節約できる合理的なアイテムだったのです。人々がちゃぶ台などの食卓を囲むようになったのは、ごく最近、昭和になってからのことです。

 箱膳に並ぶ食事といえば、米飯に味噌汁、それからおかずが1つ2つという「一汁一菜」。おかずとは「御数」のことで、飯に数を組み合わせるということですが、武士でもたとえば将軍のような身分の高い人でもなければ、一汁一菜が基本でした。

 庶民のおかずには、野菜が多く使われています。江戸の人々が肉を食さなかったというのはよく知られていますが、魚も高価で庶民にはなかなか手が届きませんでした。

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