歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


江戸の庶民は、湯具を風呂敷に包み銭湯へかよいました。そして風呂敷はやがて銭湯などで他人のものと区別しやすいように家紋や屋号を入れるようになったと言われています。
湯具は、手拭・浴衣・軽石・ぬか袋・洗い子などといったものです(写真は上がへちまたわし、下がぬか袋)

其の三 湯屋のにぎわい

 粋を好む江戸っ子たちは湯にさっと入ることを好み、湯屋は活気に満ちていました。その湯屋を仕切るのが、高座(番台)。料金を受け取り、ぬか袋のぬかや軟膏を売り、手ぬぐいを貸し、留め湯(月ぎめ料金を支払う近所の常連客)の客が来たら拍子木で奥に知らせます。同時に、客同士で問題が起きないように見張らなければなりませんから、ベテランにしかできない仕事でした。歌舞伎の舞台でも湯屋が登場しますが、ここで忙しく走り回っているのは湯くみです。客の求めに応じ身体を流すための「岡湯」をひしゃくで手渡すのが主な仕事ですから、客が途絶えるまで休む暇もありません。

 湯屋は人々の社交の場でもありましたが、石榴口の奥が暗く物騒というのが難点でした。しかも、ほとんど場合が男女混浴です。幕府は何度も男女を分けるよう要請しますが、採算の都合で実現できない湯屋も多く、女性たちは女湯の時間帯を選んだり、連れ立って出かけたりといろいろと策を練ったようです。

 歌舞伎で湯屋が登場する演目といえば、新歌舞伎「暗闇の丑松」(長谷川伸・作)です。湯くみが褌ひとつで忙しく走りまわる様子や、出入りする男女の客の風俗が描かれており、臨場感があります。

くらしの今と昔

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