歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


風流を好む江戸っ子たちは、冬だからといって家の中に引きこもらず、物見遊山にでかけました。
写真は現代の東京の雪景色、四谷周辺から新宿を撮影したものです。
酒を傾けながら、隅田川を下ったり、高台から雪を眺めるなど、江戸時代の人々にとって、雪見は一大イベントでした。(左:神田明神 右:隅田川)

其の一 江戸っ子は冬も楽しむ

 16~19世紀末にかけては世界的に気温が低く、とくに江戸時代半ばから末にかけては江戸でも大変な寒さに見舞われたとされています。それでも風流を好む江戸っ子たちは、冬だからといって家の中に引きこもらず、物見遊山に出かけたそうです。

 冬なら、まずは「枯野見」。冬枯れした野原にわざわざ出かけてその寂寞たる風情を楽しむというのは、日本的な美的感覚といえるでしょう。さらに雪が降れば、古来より風雅の極みとされている「雪見」というイベントが待っています。炬燵(こたつ)を置いた障子船に乗り、酒を傾けながら隅田川を下る「雪見船」は人気がありました。あるいは、愛宕山や上野の山、湯島、神田明神、谷中などは、高台から江戸の町を見下ろせる雪の名所として知られていました。

 それでも、時には隅田川も凍ったと言われていますから、現代の私たちにとっては冬景色の美しさを楽しむどころではないかもしれません。

くらしの今と昔

バックナンバー