歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


堀炬燵は、囲炉裏(上)の火がおき火になったところで櫓をかけ、足を乗せて温めていたことからはじまりました。置き炬燵は火鉢(下)から発達しました。
行火(左)は持ち運びできるので、重宝されました。

其の三 炬燵のある風景

 火鉢は部屋に据え置くもので、歌舞伎でも舞台に置いたままのいわゆる「出道具」ですが、同じく炭火を使っていても移動できるのが行火(あんか)です。「行」には「行灯(あんどん)」と同じく、持ち運びできるという意味があります。布団の中に入れることもできました。

 さらに小型で持ち歩きに便利なものが懐炉(かいろ)です。元禄時代になって金属の容器を使うスタイルが生まれました。現代では使い捨てカイロが一般的ですが、江戸の人々は植物の茎などの灰に火をつけ、その熱を懐に入れていたのです。

 日本の独特な暖房器具として忘れてはならない炬燵(こたつ)も、江戸時代に発達しました。室町時代に、囲炉裏の火がおき火になったところで櫓をかけ、足を乗せて温めていたのが堀炬燵の原形です。さらに発展したのが、現代でもおなじみの置き炬燵スタイル。こちらは、火鉢と櫓をセットで使いました。雪見船に載せるのも小さな置き炬燵です。

 つねに火事の危険を考えなければならなかった江戸の町で囲炉裏を作ることはまずなく、町人でも将軍でも、みな火鉢や行火、炬燵など、部分暖房で寒さをしのいだのです。

くらしの今と昔

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