歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


古代には主に清めのために行われた打ち水が、江戸では夏の習慣に。近年、ヒートアイランド対策として再評価されています。
蚊帳といえば、目にも涼しげな萌葱色です。もともとは貴人の道具でしたが、江戸時代には庶民にも普及し、柱に打った曲がり釘から吊るして使うようになりました。「枕蚊帳」と呼ばれる自立式の小さな蚊帳は、その名のとおり枕サイズで顔だけを覆うものですが、赤ちゃんならすっぽり入ることができました。

其の一 日光をよけて涼しさを

 強烈な太陽の光が江戸に降り注ぐ夏の季節、人々は少しでも涼を取ろうと工夫をこらします。長屋のおかみさんたちは障子や窓を開け放ち、日除けとして簾や葭簀(よしず)を吊ります。なかには葭戸売りを呼びとめ、敷居にぴったりの葭戸をその場でこしらえてもらう家もあります。また、普段は荷造りなどに使う渋紙売りの丈夫な紙も、夏場は日除けになりました。こうやって、町の家並みそのものが夏の趣きを増していきます。

 長屋の路地には、おかみさんたちを相手に夏の商いをしようと物売りたちがやってきます。たとえば、汗をかく時期はどこの家でも洗濯物が増えるため、竿竹売りの稼ぎ時です。着物を脱いだ後で汗を乾かすための衣紋竹を携えた者もいます。おしゃれな江戸っ子は、着物に不格好なシワなど残らないように気づかうものだったのでしょう。

 昼の暑さが通り過ぎたら打ち水をします。縁台で涼風に心をなごませるころ、あちこちで蚊をいぶりだす蚊遣火の煙が漂います。やがて床に入る時間が来たら、蚊帳の下に入って団扇であおぎながら眠りにつくのです。

くらしの今と昔

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