歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


金魚はもともと紅色だけでしたが、白や紅白混ざったもの、黒斑など次第に種類が増え、江戸で最も愛されるペットとなりました。長屋だけでなく、貴人たちの間でももてはやされたため、丸々とした腹を持つ丸つ子(または蘭虫)や、尾の見事な朝鮮金魚など、質の良い金魚は高騰し、3〜5両にもなりました。
夏の風物詩として知られるホオズキ。七夕やお盆などの飾り花として利用されます。種子を抜いて、口に含んで鳴らすなどの遊びにも使われていました。

其の二 味わう涼、目にする涼

 夏の江戸には、この時期だからこそ楽しめるものもたくさんあります。冷や水売りが来たら白玉入りの甘い砂糖水、白玉売りなら紅白の白玉、心太(ところてん)売りがやってくればつるつるとした心太を味わえます。心太は、上方では砂糖で甘くするものでしたが、江戸では砂糖か醤油のどちらかを好みで選びました。

 また、当時は庶民の間で日傘が流行し、女性たちは浅葱色の日傘や鼠色の両天(晴雨兼用)傘で、強い日差しをよけるようになりました。そんな彼女たちとは対照的に、橋の上で笠もかぶらず口上を述べるのは、是斎(ぜさい)売りです。売り物は「和中散」という暑気払いの薬ですから、自らその効き目を示すために積極的に日を浴びていたのでしょう。同じく橋の上には、琵琶の葉を煎じた琵琶葉湯(びわようとう)売りも現れます。いずれも喉の渇きを抑えるなどの効能をもつ薬湯で、彼らの姿も江戸の夏の風物詩でした。

 観て涼を取れるのが、水を泳ぐ鮮やかな金魚たちです。長屋に色とりどりの金魚が泳ぐ桶をかついだ金魚売りがやってくると、女性たちや子供たちが集まってきます。また、「玉や玉や」とシャボン玉を飛ばしながら呼び声を上げる、さぼん玉売りも人気でした。

くらしの今と昔

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