歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


宝田恵比寿神社は、日本橋七福神の1つ。もとは宝田村の鎮守様でしたが、江戸拡張にあたり住人たちと共 に移転してきました。その後この地は人も物資も集まる商業エリアに発展し、大伝馬町の名を賜りました。
べったら漬けは大根を塩と糠で下漬けしてから、麹に漬けます。さっぱりした甘みと歯ごたえの良さが、江戸の人々に好まれました。なお、べったら市は、現在も毎年10月19〜20日にかけて日本橋の宝田恵比寿神社で行われています。
 

其の三 寒さに冴える楽しみ

 旧暦10月上旬には立冬がやってきます。これを過ぎて5日ばかり経ったころには菊の花は最盛期。男も女も巣鴨あたりの菊花壇を見物に出かけていきます。

 もちろん夜は肌寒く長くなりますが、江戸の人々はじっと家にひきこもってばかりではありません。10月20日の恵比寿講に先駆け、前夜には宝田恵比寿神社のある大伝馬町で一夜限りのべったら市が立ちます。もともとは恵比寿講に必要なものを買いそろえるための市ですが、ここで最も有名なのはべったら漬けと呼ばれる浅漬け大根。通りでは威勢の良い「べったらべったら」の声が飛びかい、道往く女性たちは袖が浅漬けの粕(かす)に触れないよう右往左往するほどにぎわいました。

 翌日の恵比寿講は、どの商家にとってもたいへん大きなお祭りです。恵比寿様には鯛を供え商売繁盛を祈ります。店々の軒先には簾が掛けられ、そこから親族やお得意先の人々を招いた宴会のにぎやかな様子がもれてきます。
歌舞伎の『菊畑』
 『鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)』の『菊畑』。舞台は、源氏の遺臣でありながら平氏に仕える兵法家の吉岡鬼一法眼の屋敷です。鬼一が蔵する兵法秘伝の書「六韜三略の巻」をねらい、牛若丸と智恵内(実は鬼一の末弟・鬼三太)が共に素性を隠して奉公しますが、鬼一の娘・皆鶴姫は牛若丸に想いを寄せてしまいます。それぞれの思惑が複雑に絡み合う中、鬼一の愛でる美しい菊が舞台を見事に彩ります。

くらしの今と昔

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