歌舞伎いろは
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旧暦12月13日は、毎年江戸城の御煤払いの日。この日の前後に、町でも煤払いをするものでした。掃除といえば、手ぬぐいが大活躍で、防塵マスクや帽子の代わりになります。大奥では、普段の掃除に使う手ぬぐいは、白無地のさらし木綿と決まっていましたが、この御煤払いだけは別格で、鮮やかな染め模様の手ぬぐいも使えました。
掃除といえば、箒(ほうき)です。江戸では、棕櫚(しゅろ)の箒、竹箒、草箒など、何でも箒売りが担いで売りに来ました。買う人は、古い箒に銭を添え、新しい箒と交換します。箒売りは、下取りにした古箒を解体し、棕櫚の縄やたわしとして作り直して、再び町で売るのです。

其の二 イベントとしての大掃除

 年の終わりである12月を、なぜ「師走」と呼ぶようになったのかについては、いろいろな説があります。僧たちが東西に走り回るから、「師馳す」だという話もありますが、12月に大忙しとなるのは、何も僧たちばかりではありません。

 旧暦12月8日は、「御事始め」の日です。新しい年までには、準備しておかなければならないことが目白押し。そこで、正月に向けてのさまざまな「事」を始める日も決まっていたのです。この日の味噌汁は特別で、サトイモやコンニャク、人参、大根、ゴボウ、焼き豆腐、赤豆など、いつもとは違う具が入ります。この日限りのスペシャル味噌汁をすすると、大人はもちろん、小さな子供まで、正月に向けて気をひきしめるのです。

 現代でも年末には大掃除をするものですが、江戸の場合は、煤(すす)払い。これは、かなり大きなイベントでした。どこの家でも必ず行いますが、とくに忙しい商家などは、夜中に行うことが多かったようです。出入りの職人やとび職などがみな集い、夜中といえど大にぎわいです。家中がぴかぴかになったら、働いた人たちは、お祝い金と手ぬぐいをもらい、ちょっとした宴会も楽しみます。

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