歌舞伎いろは
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。


正月にはいろいろな遊び道具が活躍します。昼間は男子なら凧、女子は手毬つきや羽根つきをします。夜は家に戻り、双六道中やいろはカルタ遊びです。歌を覚える年になれば、老若男女入り混じり、小倉山百人一首をはじめ、さまざまな歌カルタに興じます。
七福神の乗った宝船は江戸で人気のモチーフで、正月ならではのものでした。恵比須、大黒天、弁財天、毘沙門天、布袋、福禄寿、寿老人の七福神のなかでも、商家は恵美須と大黒天、職人は布袋、武士は毘沙門天をとく特に好んだそうです。

其の三 年に1度の遊び

 元旦の江戸の町には、普段のにぎわいが嘘のように静けさが訪れます。旧暦の正月は立春の手前、現在の暦の1月末から2月の半ば過ぎまでの時期です。まだ肌寒いながらも陽は明るくなり、まさに初春の風情ですから、外遊びにぴったり。人通りのなくなった町では、午後から子供たちが遊び始めます。

 人のいない町で凧揚げができるのも、年に1度のこの時だけ。男の子たちはいさんで自慢の凧を揚げはじめます。また、女の子たちは羽根つきを楽しみます。江戸では美しい女性や人気役者などをかたどった、押絵羽子板が流行りました。若い女性たちも晴れ着姿で、いつもよりきれいに化粧をして、羽子板を手にするのですから、華やかな風情です。通りには笑い声が絶えません。

 正月2日には、江戸の町は明け方から初荷・初売りでにぎわいます。職人の仕事も、勉強も、弓術や馬術、琴や三味線などの習い事も、すべてが一斉に始まります。この日の夕方、人々は宝船を描いた印紙を買い求めます。七福神が描かれた縁起の良い紙を枕の下に入れて、良い初夢を見るのです。
『正月らしい歌舞伎は?』
 歌舞伎十八番の内の1つ、『矢の根』は、正月の雰囲気がたっぷりの演目です。正月料理を列挙したり、七福神をちゃかすなど、正月ならではの台詞も。年始の挨拶、宝船の絵、曾我五郎が兄の危機を知る夢、初荷の馬など、初春ならではのアイテムが続々と登場します。

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