歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



知るって楽しい!観劇前の特別講座
今回初めて歌舞伎をご覧になる方もいらっしゃいました。

 今回のイベントは、新橋演舞場で行われた「初春花形歌舞伎」をご観劇いただくという内容でした。抽選でご招待した27組54名のみなさまにご覧いただいたのは、市川海老蔵丈が一人で十人の役柄を演じ分ける『伊達の十役(だてのじゅうやく)』です。

 観劇に先立ち、イヤホンガイド解説員の松下かほるさんから演目についてご解説いただきました。特別講座の会場は、新橋演舞場の地下1階にある地下食堂「東」です。

 松下さんは、青山学院大学在学中から歌舞伎に傾倒し、国劇部に在籍されていました。当時は、学習院大学の国劇部と合同で公演をされていたそうで、その学習院の大先輩にイヤホンガイド解説員の小山觀翁さんもいらっしゃたそうです。学生時代の歌舞伎の思い出に続いて、『伊達の十役』の解説へとお話は移ります。ちょっと複雑なこのお芝居の筋をわかりやすいレジュメにまとめて下さり、丁寧にお話いただきました。その一部をご紹介いたします。

上:松下かほるさん
左:受付には早くからお並びいただきました。ありがとうございました。
 
松下さんが特別に見せてくださったイヤホンガイドの原稿。
 
松下さんお手製のレジュメは大変わかりやすいと大評判でした。

 「このお芝居の最初には、口上(こうじょう)があります。口上というのは舞台から役者が客席のみなさまに何かを述べるというもので、追善口上とか襲名口上とかさまざまあります。今回は、このお芝居についての説明を海老蔵さんが述べられます。
 口上には、ちょっと約束事があるんです。必ず紋付き裃(かみしも)の正装で登場するんですが、それぞれの家で家紋が決まっているように、裃にも家の物が決まっています。だから役者が自分の好みや気分で色を選んだりはできないんですね。市川團十郎家の場合は柿色の裃に三升の紋が入ります。
 それからかつらの形も家によって違っておりまして、市川團十郎家ではまげは、「まさかり」と決まっております。横から見ると金太郎が持っているようなまさかりの形に似ているからそう呼ばれています。「まさかり」のまげを使う芝居もありますが、口上の「まさかり」は、それとはちょっと違う口上用の「まさかり」です。今日はよくご覧になっていただきたいと思います。
 今後ほかの口上をご覧になる機会があれば、衣裳や髪型にも注目されるとそれぞれ家によって違っていることにお気づきいただけるかと思います」

 わかりやすい解説に会場のみなさまもじっと聞き入っておられました。また最後にイヤホンガイドについて会場からこんな質問も飛び出しました。
 「解説員の方は実際に舞台をご覧になりながら解説をされているのでしょうか?」

 松下さんの答えは、
「あらかじめ録音しておいて、放送室のオペレーターがタイミングをみはからって毎日送り出しているんですよ」。
 なるほど。ここでは割愛しますがイヤホンガイドの裏話も大変おもしろく、会場のみなさまもうなずきながらお話を聞いておられました。

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