夏休みと言えば、自由研究。日頃みつけた小さな疑問を調べる絶好の機会です。今回、歌舞伎美人では、「歌舞伎に登場する十二支」をテーマに、藤浪小道具の倉庫を坂東亀三郎さんと一緒に探検します。
坂東亀三郎(ばんどうかめさぶろう)
平成25(2013)年生まれの小学5年生。巳年。父は九代目坂東彦三郎。祖父は坂東楽善。平成29(2017)年5月歌舞伎座『壽曽我対面』の鬼王家臣亀丸で六代目坂東亀三郎を名のり初舞台。特技は工作と絵画。趣味は野球観戦(ヤクルトスワローズの大ファン)と、現在は剣道に熱中。休みの日にはお父さんと愛犬の散歩をする。
藤浪小道具(ふじなみこどうぐ)
歌舞伎の小道具を提供する会社として、明治5(1872)年に初代藤浪与兵衛が東京・浅草6丁目にて開業。以来150年、歌舞伎とともに時代の変化を歩んできた。関東大震災や東京大空襲の際は、歌舞伎文化を守るため小道具保全に努めるなど、現在に至るまで歌舞伎の舞台を支えている。歌舞伎以外にもテレビ番組、一般演劇の小道具も広く扱っている。
藤浪小道具公式サイト
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藤浪小道具の倉庫を探検し、歌舞伎の十二支をみつけます。
作ってみよう
お面の絵付けに挑戦。おうちで出来る簡単な工作もご紹介します。
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歌舞伎に登場する動物で、十二支はそろうのか?
歌舞伎にはさまざまな動物が登場しますが、果たして十二支はすべて登場するのでしょうか。まずは、藤浪小道具の倉庫を探検し、「歌舞伎に登場する十二支」をみつけていきます。みつけられない動物に関しては、「歌舞伎 on the web」や、過去の公演に関する記事を参考にリサーチ。その結果、十二支すべての動物をみつけることができました!
分かったこと
- ・歌舞伎では十二支がすべて登場する
- ・歌舞伎の小道具には知恵と工夫が詰まっている
今回の探検を通じ、十二支はすべて歌舞伎に登場するということが分かりました。また、小道具にはたくさんの知恵と工夫がつまっていることを知ることができました。そのなかで特に印象的だった3つの工夫をご紹介します。
1. 目の錯覚をいかした工夫
大きい馬の手前にある小さな馬は、仔馬ではなく、遠く離れた場所にいることを表すための馬。同じ大きさのものでも、遠くにあるものの方が小さく見えることを生かした小道具です。大きな馬に乗った大人の役を、同じ格好をした子役が小さな馬に乗って演じることで、その役が遠くの場所に移ったことを表現します。現代で言う、3Dの手法です。『一谷嫩軍記』では、戦いの場面が陸地から海に移ったときに登場するため、馬の足が海に入っているように見せています。
2. 古い紙を活用する知恵
馬の内側をのぞくと、そこには漢字がいっぱい並んだ古い紙。馬の土台を作るこの紙は、「反故紙」と呼ばれる、昔の和本(日本の伝統的な製本法で作った本)や、大福帳(江戸時代に使われた、お店のお金の出入りを記した和紙でできた台帳)をばらした古い和紙だそう。発泡スチロールなど、軽い素材はたくさんありますが、それでは中の俳優さんが息が吸えなくなってしまうため、今も反故紙が使われ続けているのです。
また、亀三郎さんも実際にイノシシの中に入り、すばやい走りを見せましたが、「重くて前が全然見えなかった」とのこと。鼻の穴と、足元からしか外が見えないため、実際の舞台で使用する際は、小道具さんが舞台袖で青いペンライトを振り、中の俳優さんに合図を送るそうです。
3. 舞台を楽しくする仕掛け
桜の木に縄で縛りつけられてしまった雪姫が、つま先でネズミの絵を描くと、そのネズミに命が宿り縄を食いちぎって雪姫を助けるという、『祇園祭礼信仰記』「金閣寺」のなかの一場面。ネズミは使命を果たすと、桜の花びらとなり、一瞬で消えていきます。この美しい場面を表現するために、小道具には仕掛けがあり、ネズミを少し浮かせた状態で紐を引っ張ると、そのなかから桜の花びらがこぼれます。ネズミが地面に着かないようにしながらの操作はなかなか難しいようで、亀三郎さんは3度目の挑戦で成功しました。