江戸の技術が生み出す、新しい浮世絵

楳図かずお『ぐわし大首絵 雲母摺乃圖(ぐわしおおくびえ きらずりのず)』

水木しげる『妖怪道五十三次』

石ノ森章太郎「佐武と市捕物控」

 「絵師がいれば、新しい浮世絵は作れる」
 江戸から続く手技を継承し続けているアダチ版画研究所が力を注いでいるのが、現代浮世絵の制作です。数々の作品の中でも目を惹くのが、漫画を題材とした浮世絵です。研究所の中山さんに浮世絵の技法と漫画の相性を伺いました。

 「浮世絵も漫画もアートというよりは、大衆メディアとしての側面を持つことから制作工程で、常に効率性・採算性が考慮されます。そのため、表現は非常に省略化され、誰にでもわかりやすいものになっています。このように浮世絵と漫画とは、その果たす役割だけでなく表現や制作方法においても共通点があるため、浮世絵の技法との相性がぴったりなのです」

 楳図かずおさんが描いた原画は、人物の躍動感がきっぱりとした線で見事に表現されています。原画を描いていただいてから、楳図さんとアダチ版画さんとで配色を決め、7枚の版木を彫るという江戸と全く同じ技法で制作しました。

 「まことちゃんが“ぐわし”をしている『ぐわし大首絵 雲母摺乃圖(ぐわしおおくびえ きらずりのず)』は、江戸時代の役者絵のような力強さです。楳図先生ならではの強弱のある美しい線と鮮やかな配色から、写楽の大首絵にみられるような浮世絵らしさが上手くだせました」

 まことちゃんの背景は「キラ」と呼ばれる鉱石の雲母を含んだ顔料が摺り込まれています。輝きを持つ背景が、人物を手前に押し出す効果は江戸の役者絵に使われたのと同じです。そしてもう1つ。『ゲゲゲの鬼太郎』の登場人物たちを描いた水木しげるさんの『妖怪道五十三次』も見せていただきました。

 「こちらは、広重の『東海道五拾三次』の世界に、おなじみの妖怪キャラクターを上手く配置し、色も浮世絵風にし、空の部分のぼかしなど伝統的技法を盛り込みながら作りました。水木先生らしい新しい浮世絵の世界が生まれ、多くの方々に楽しんでいただいています。これからも漫画家など絵師となる方々のお力を借りながら、皆さんが楽しめる新しい浮世絵を伝統の技術を活かして作っていきたいです。」

 表現の極みに達した技は、年月を経ても消えることはありません。むしろ、新しい生命を持ってより輝くことを現代浮世絵は私たちに教えてくれます。

江戸職人手帖

バックナンバー