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27日公開、勘九郎、七之助、松也が語るNEWシネマ歌舞伎『三人吉三』
6月27日(土)より、東劇、新宿ピカデリーほか全国54館で公開されるNEWシネマ歌舞伎『三人吉三』に出演の中村勘九郎、中村七之助、尾上松也が、作品についての思いを語りました。
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ここが新しい、シネマ歌舞伎
「新しいシネマ歌舞伎の形、その第一歩となったことがうれしいです」と、インタビューの口火を切った勘九郎。「映画のために写真を撮ったことも懐かしい」と七之助が語るように、NEWシネマ歌舞伎『三人吉三』では、芝居の映像の合間に効果的にスチール写真がはさみ込まれ、実際の舞台では見落としてしまうような瞬間が切り出され、ストップモーションよりも鮮やかに目に残ります。
「もともとの舞台美術に映像処理を加え、舞台の情景がより美しく、作品の世界観がよりわかりやすくなるよう工夫されています」と明かしたのは松也で、特に印象的なのは、「巣鴨吉祥院の場」で背景の天女が映し出されるところと言います。斬新な演出として、「最後の大立廻りで、雪が降った後の最後のシーン」を挙げた勘九郎は、「串田監督は映画が撮りたいんだろうなということがすごくよく伝わってきました」とも語り、三人の満足げな表情からも作品への期待がふくらみます。
舞台作品から新しい映像作品に
今回は舞台の演出・美術にあたった串田和美が、シネマ歌舞伎の監督を務めました。舞台上のあちこちにカメラが仕込まれましたが、出演者は特に映画用の演技をしたわけではないと言います。試写を見た三人の感想は「笹野さんがすごい」。勘九郎は、「シネマ歌舞伎では、舞台の暗転が真の闇になります。お竹蔵裏の場の、闇からすっと手が出るところとか素晴らしい。僕たちももっと細かく、深く、役やお客様の視線を考えて芝居をしないといけない」と、一例を挙げました。
「長屋のシーンが生き生きとして、雰囲気もよかった。僕たちは見られなかったところですが、あの賑わいがあったから、三人の孤独感が出たんだなと」、映像を見たからこそわかったことを話したのは七之助で、一方、松也は「アップの表情を見ると、自分が思い描く理想とは違うところもありました。もっとできたのではと考えるところもあります」と、客観的な立場から自分を厳しく見る一面ものぞかせました。
コクーン歌舞伎『三人吉三』、あの舞台の熱
あらためてコクーン歌舞伎『三人吉三』の舞台を振り返り、思い出を語ったのは七之助です。「舞台稽古の初日、衣裳から福助の叔父がつけていた香りがして、心にジーンときました。そして、父と叔父たち三人が命がけで生んだ、自分たちにとっても重要な、あの『三人吉三』を思い出し、魂に火がついてがむしゃらにやった。松本での公演の千穐楽でその匂いが消え、ちょっとは福助の叔父のお嬢から七之助のお嬢に変わったんじゃないかなと、自分なりに解釈しています」。
七之助が、「体に沁み込んだお三味線のリズムから抜け出すのが大変だった」という名のりの場面で、お嬢吉三と真っ向から立ち会ったのは、松也のお坊吉三です。「二人でせりふもテンポも気にせず、現代劇みたいに胸ぐらをつかみあってやってみたりもしました。皆が本気で力を入れてやってみると、たとえば、本当に押さえこまれた刀は動かせないし、歌舞伎の型は、もともとそういう本気でやっていたことが形になり、型として残っていることがよくわかりました」。
演出家の「なぜ?」の問いかけで「気づき」を得たのは勘九郎も同じです。「黙阿弥の、ビジュアルで見せる、意味なくカッコイイところに、串田さんが踏み込んでくるんです。どうやって型、見得が生まれたのか、その理由を探す稽古でした。コクーン歌舞伎以外で同じようにはやりませんが、でも、やったことで経験を積み、いつもの『三人吉三』を演じる機会があれば、見えないリアリズムが出てくると思います」。
「今の僕たちにしかできないことをやろうと思い勤めていましたが、僕たちの『三人吉三』ができたなというのが一番の喜び」と勘九郎が言い、「この三人で出演できてよかった。お二人がいたからこそ、僕も引っ張られて最後まで命がけで演じることができました」と松也も続け、“自分たちの”にこだわりを見せた三人。七之助が、「賛否両論あると思いますが、そういう芝居ができたことは何かが生まれるチャンスだったのでは。それがこのNEWシネマ歌舞伎につながったと思います」と、締めくくりました。
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NEWシネマ歌舞伎『三人吉三』は27日(土)よりの公開。お近くの上映館はこちらをご覧ください。
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