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愛之助が語る、大阪松竹座の通し狂言『鯉つかみ』
6月13日(土)から始まる大阪松竹座 「六月花形歌舞伎」で、通し狂言『鯉つかみ』の12役を勤める片岡愛之助が、公演への思いを語りました。
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5月・6月に東京と大阪で通し狂言『鯉つかみ』に出演する愛之助。「通し上演をと思っていたのですが、それは明治座で先にするので、大阪松竹座では何か趣向を変えてやろうと、12役早替りのスペシャルバージョンにさせていただきます」と、5月の6役早替りから一気に2倍になったことに、数字以上の意気込みを見せました。
12役で大阪バージョンの『鯉つかみ』を
12役には、明治座公演でほかの人が勤める大百足(おおむかで)役も入っており、「現代のイリュージョンは使いませんが、吹き替えなど昔からある古典的な早替りの手法で、退治する側とされる側、両方を演じます。登場人物を増やした分もあります」。場を増やしたりはせず、同じ芝居の流れでの12役。「5月の公演をやってみて、もっと変わる可能性もおおいにあります」と、さらなる意欲も語りました。
「意味のある早替り、『鯉つかみ』のストーリーがわかる中で、12役はマックスではないでしょうか。早替りを見て楽しんでいただくという考え方もありますが、やはりお芝居をお見せしたいですし」と、愛之助はあくまでも演目の面白さを伝える上演にと強調しました。そのため5月と同様、読本や当時の劇評などを手掛かりに新たにつくり上げた、鯉の恨みを受ける端緒、大百足退治のくだりも上演します。
楽しんでいただく芝居にして後世に残したい
愛之助は、平成24(2012)年11月の「永楽館歌舞伎」で初めて『鯉つかみ』に挑んで以来、25年5月明治座、26年6月博多座と回を重ねてきました。「永楽館は客席が近く、楽しんでくださっているのがわかったのですが、大劇場でもお客様とキャッチボールができているなと感じました。宙乗りもできて水槽も大きくなり、今年は大百足と戦うところもつきます」。公演ごとに進化を遂げ、「大事にしていきたい狂言の一つ」と、強い思い入れを語りました。
志賀之助が鯉を相手に見せる本水の水槽での闘いの場は、毎回、客席が一段と大きく盛り上がります。「水槽の水は毎日換えないと、底が滑って危険なんです。目に見えない細菌とも闘っています」と舞台裏の労苦も明かし、水の安全を肌で感じながら、それでも「着物のお客様がいらっしゃると、ビニールシートでカバーしていただいてもすごく気を遣うんですけど、逆に“かけてー!”と叫ぶお客様もいらっしゃって。これ、水をかける芝居じゃないんですけど…」と苦笑い。
志賀之助は闘い終えてずぶ濡れのまま「泳ぎ六方」で花道を引込みますが、「水中を泳ぐような感じですが、これはクロールのように泳ぐのとは違うからと、我當の伯父に念押しされています」。早替りや宙乗り、本水での立廻りなど、お客様に楽しんでいただくための工夫の数々も、「先輩から教わり、後輩に伝える。教わって知っていることが大事」と表情を引き締め、「楽しんでいただければとつくったものが、後世の人に面白いなと思ってもらえれば」と、『鯉つかみ』の再演を重ねることへの熱い思いを言葉にしました。
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12役早替りは愛之助にとって未知の世界。「水に入るって結構、疲れるんですよ。こればっかりはやってみないとわかりませんが、頑張ります」との言葉とはうらはらに、挑戦を楽しんでいる様子。大阪松竹座「六月花形歌舞伎」は6月13日(土)~から26日(金)までの公演。チケットは、鯉のぼりがはためく5月5日(火・祝)より、チケットWeb松竹、チケットホン松竹にて販売予定です。