南座『あらしのよるに』出演者が語る

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 9月3日(木)から始まる、京都四條南座「九月花形歌舞伎」で、新作歌舞伎『あらしのよるに』に出演する中村獅童、尾上松也、中村梅枝、中村萬太郎、市川月乃助が、公演への意気込みを語りました。

 オオカミの「がぶ」、ヤギの「めい」、食べる者と食べられる者の関係にある二者が、友情を感じ、信頼を築き、相手を思いやる…。

 広く知られた原作絵本の世界を歌舞伎として上演するにあたり、獅童は『義経千本桜』「四の切」の狐忠信を引き合いに出して、「人間が狐を演じ、喜劇にもなりそうなところですが、メルヘンがあって誰もが感動します。それが歌舞伎の魅力。子が親を慕う気持ちのように、友情といった普遍的なテーマがあれば、絵本の世界も歌舞伎に通じるエンタテインメントの世界だと思います」と語りました。

歌舞伎版『あらしのよるに』をつくる!
 原作をベースにしながら、「創作的な要素も絡ませて、メインのストーリーをつないでいく」と脚本の今井豊茂が構想を明かし、獅童も「動物の世界観で芝居に限界が出てしまうところには、人間世界に置き換えた場面なども出てきますが、登場するのはすべて動物です」と続けました。

 がぶは「オオカミだけれどどこかお人よし」(獅童)、めいは「一見、おとなしそうだけれど、実はがぶより気が強いところもあって、つっころばしのような風貌だけれど気が強いという歌舞伎にはあまりいないキャラクター」(松也)と、原作のままの役柄もあれば、みいはヤギ一族の姫という設定で、「品があっておしとやかだけれど、心は情熱的という歌舞伎の典型的な姫」(梅枝)と、原作とは異なる役柄もあります。

 「原作に出てくるので、本を読み込みました。時代物の役づくりになるのかなと思っています」と語ったのは、めいの幼馴染み、たぷ役の萬太郎。月乃助の演じるぎろも、原作どおりオオカミのボスです。「歌舞伎を初めて観たとき、歌舞伎は動くアニメだと感じました。歌舞伎には古典からの素晴らしい演出法があるので、それらを駆使することで素敵な作品になると思います」と、二次元の絵の世界から歌舞伎になることへの期待を述べました。

歌舞伎の持つ力を存分に発揮させる
 「風や雨の音の表現など、歌舞伎ならではの見せ方にこだわりたい」と言う獅童。「踊り、立廻りも見どころの一つで、歌舞伎の演技法、歌舞伎の演出法、歌舞伎の音楽にこだわり、『あらしのよるに』を歌舞伎で表現するとこうなるとお見せしたい」。松也も「歌舞伎の技法を意識しながら、見たことのないめいをつくりたい」と意気込みます。

 長唄や義太夫といった歌舞伎音楽、藤間勘十郎振付による舞踊、そこに現代劇の衣裳で活躍するひびのこづえデザインの衣裳が加わります。「デザイン画を見て化粧はこうしようと、自分たちで相談しながら仕上げていきます」と獅童がいろいろなアイディアを並べ、松也も「新作では衣裳や鬘、役どころから想像を膨らませてつくっていきます。でも、大仰にしなくても、演技や演出でそれらしく見えるようにできるのが歌舞伎の力。そこで勝負すれば、独特の作品になると思います」と、力強く語りました。

原作者からの期待のコメント
 また、会見には、現代作家の絵本として初めて歌舞伎になることを喜ぶ、絵本『あらしのよるに』(講談社刊)原作のきむらゆういち氏から、「歌舞伎の世界でガブやメイはどんなふうに演じられるのだろうかと今からワクワクしています」とのメッセージが届けられました。

 獅童に出会って歌舞伎との縁ができたと言うきむら氏は、「20年ほど前にファミレスの片隅で生まれた原稿が、まさか将来歌舞伎になるなんて、書いたときは思ってもいませんでした」と続け、「今度の作品でより多くの大人や子どもが、歌舞伎大好き人間になってくれることを願っています」と、今回の舞台に大きな期待を寄せました。

 獅童の演じる「四の切」の狐忠信を見た番組プロデューサーが、『あらしのよるに』の読み聞かせ番組への出演依頼をしたのが、作品との出会いだったと明かした獅童。「長年の夢がかないました。見て楽しく、感動できる作品になればと思います。幅広い世代の方に楽しんでいただきたい」と、作品への深い思いを込めて歌舞伎版『あらしのよるに』へのご来場を呼びかけました。

 京都四條南座「九月花形歌舞伎」は9月3日(木)から26日(土)までの公演。チケットは7月21日(火)、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて発売予定です。

南座『あらしのよるに』出演者が語る
2015/07/15