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歌舞伎座「十二月大歌舞伎」の賑わい

2024年12月3日(火)、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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第一部の『あらしのよるに』は、きむらゆういち原作の絵本発刊30周年を記念し、8年ぶりに歌舞伎座で上演。舞台は、このたび新たに書き加えられたがぶとめいの記憶の場面から始まり、幼いころのがぶ(夏幹)とめい(陽喜)が登場します。続いて、狼のがぶと山羊のめいが嵐の夜に出会い、翌日の再会の場面へ。初演よりがぶを演じてきた獅童と、初役でめいを勤める菊之助による、息ぴったりな掛け合いや縦横無尽に客席をめぐる演出に、場内は大いに盛り上がります。
二人が友情を育む一方で、めいたちを捕まえようとする狼のぎろ(松緑)の企みが明らかになっていきます。狼のばりい(國矢改め精四郎)が、めいの行方を聞こうとがぶを連れてきたところで、精四郎と獅童による狂言半ばで襲名のご挨拶が始まります。獅童の温かいエールを受けた精四郎の感情あふれる決意表明に、割れんばかりの祝福の拍手が送られました。そして、ある晩にがぶとめいが美しい月を眺めているところへぎろが現れ、いよいよ物語は佳境に。狼と山羊との息を呑む大迫力の立廻りは手に汗握る展開が続き…。幕切れでは、がぶとめいの強い友情に、客席も手拍子で一体となり、温かい雰囲気に包まれました。
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第二部は、江戸の粋が巧みに織り込まれた世話物の『加賀鳶』で幕開きです。日陰町の松蔵(勘九郎)、春木町巳之助(獅童)ら加賀鳶たちが歌舞伎座の花道に勢ぞろいする様は壮観で、黙阿弥らしい七五調のツラネが、場内に粋な江戸の風を呼び込みます。定火消との喧嘩で血気に逸る加賀鳶の若い者たちを気風良くとめたのは、頭分の梅吉(松緑)です。一方、按摩の道玄(松緑)は、通りがかりの百姓を手にかけてお金を盗んだり、深い仲のお兼(雀右衛門)と強請りをしたりという悪党ぶり。そこへ悪事の証拠を握る松蔵が現れ事態は一変、ここでも七五調の名ぜりふで展開される道玄と松蔵のやり取りが聞きどころとなります。おかしみあふれる立廻りに観客からは笑いが漏れ、すっきりと晴れやかな結末と、どこか憎めない道玄に大きな拍手が送られました。
続いては、長唄舞踊の名作『鷺娘』。幕が開くと、しんしんと雪の降る水辺に、綿帽子に白無垢姿の娘が一人佇んでいます。傘を差したこの娘は、人間との道ならぬ恋に悩む鷺の精(七之助)。恋に思い悩む様子を踊りで見せていきますが、ところどころで鷺の精であることを感じさせます。衣裳が引き抜かれ、艶やかな町娘の姿となると、客席は驚きとがらりと変化した雰囲気への期待感に包まれます。曲調も変わり、恋しい男と結ばれた頃の様子や、男心のつれなさを訴えていきます。そして舞台は降りしきる雪のなかへ。ついに鷺の精の本性を現し、幻想的な美しさのなかで激しく凄まじく踊る幕切れが、場内に深い余韻を残しました。
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第三部は、季節の移ろいをコミカルに描いた、中村屋ゆかりの変化舞踊『舞鶴雪月花』から始まります。愛らしい娘姿で桜の名所の景色を唄いながら、花の香りが漂うように艶やかに舞う桜の精、月明りのすすき野で、短い生命の運命を哀れに踊る松虫、雪景色の町中で、炭屋の町娘への恋心を滑稽に踊って見せる雪達磨と、勘九郎が異なる姿で現れるたびに客席からは驚きの声が。勘九郎が歌舞伎座で初めて踊る『舞鶴雪月花』、3役目の雪達磨では、軽妙な踊りに客席から笑い声と拍手が起こります。場内の温度も上がるなか、燃える恋心とともに昇ってきた朝日を受けて雪達磨のからだはどんどん溶けていき…。「中村屋!」の大向うが響きわたり、惜しみない拍手が送られました。
締めくくりは、幻想的で詩情豊かな泉鏡花の世界が浮かび上がる『天守物語』です。舞台は播磨国姫路にある白鷺城。この天守閣の最上階、異界の者が暮らす別世界に、美しく気高い富姫(玉三郎)が住んでいます。富姫を姉と慕う亀姫(七之助)がやって来て二人が並ぶと妖しくも美しい魅力にあふれます。そこへ姫川図書之助(團子)が白鷹を探しに天守へ現れ、空気が一転。富姫が図書之助への思いを表現していく様は、物語の最大のみどころです。当り役として輝きを放ち続ける玉三郎の富姫と、堂々と真っ直ぐに図書之助を演じきった團子が描く至上の恋が、観客をすっかり魅了しました。
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歌舞伎座地下2階の木挽町広場では、12月期間限定で超有名店の銘菓などを販売します。観劇の際はぜひお立ち寄りください。
歌舞伎座「十二月大歌舞伎」は、26日(木)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。