ニュース

菊之助『鷺娘』披露、「歌舞伎座スペシャルナイト」の盛況

菊之助『鷺娘』披露、「歌舞伎座スペシャルナイト」の盛況

 左より、片岡一郎(弁士)、尾上菊之助、古舘伊知郎

 

 

 10月27日(木)、第29回東京国際映画祭プレゼンツ「歌舞伎座スペシャルナイト」が開催され、菊之助が『鷺娘』に出演しました。

 今回の東京国際映画祭(TIFF)は25日(火)に始まり、11月3日(木・祝)の東京グランプリ受賞作品上映まで、10日間にわたり映画を中心としたさまざまなイベントが開催されます。「歌舞伎座スペシャルナイト」も今年で3回目となり、ますます国際色豊かに彩られた客席を前に、日本映画2本と舞踊『鷺娘』が披露されました。

 

菊之助『鷺娘』披露、「歌舞伎座スペシャルナイト」の盛況

 開演前、歌舞伎座入り口前のTIFFのロゴが入ったレッドカーペットに菊之助と、古舘伊知郎、弁士の片岡一郎が登場。菊之助は『鷺娘』について、「歌舞伎の女方の美がぎゅっと詰まった舞踊でございます。歌舞伎の特徴である早替りもあり、引抜き、ぶっ返りという手法が入っていて、衣裳が一瞬にして変わります。初めて歌舞伎をご覧になる方には非常に珍しい趣向ではないかと思います」と、国際的な映画祭だけに、外国のお客様を意識した紹介をしました。

 

 開演時間となり、定式幕が開いた舞台の中央には古舘。「この幕、人が開けているんです。思わず実況したくなりました」と、早くもエンジン全開。「トーキング忠臣蔵」と題し、“喋り屋古舘伊知郎”がマシンガントークを繰り出します。これほどのロングランはない『忠臣蔵』、果たしてそれは忠誠心なのか、から始まって話は縦横無尽に広がり、ようやく話が戻ったところで『血煙高田の馬場』の上映スタート。中山安兵衛役の大河内傳次郎、町人役の伴淳三郎を中心に古舘節がさく裂し、昭和3(1928)年の映像がいきいきと現代に息づきました。

 

 続いては片岡の活弁と三味線、ピアノ、太鼓の生演奏が入った、『忠臣蔵 デジタル最長版』の上映です。「活動写真と弁士、現代の人間が語ると、(写されたものが)今の問題としてよみがえってくる。『忠臣蔵』が今、私たちにどう響くかをご覧いただければ」と、オープニングで語っていた片岡。「尾上松之助没後90年、この年に松之助が歌舞伎座の檜舞台に。こんなうれしいことはございません」と、映画人としての喜びを語り、同じ『忠臣蔵』の世界でありながら、古舘とはまた違った味わいを醸し出しました。

菊之助『鷺娘』披露、「歌舞伎座スペシャルナイト」の盛況

 『鷺娘』尾上菊之助 (C)2016 TIFF/SHOCHIKU

 幕間のあとは、緞帳が上がって『鷺娘』の上演です。水辺にすっと現れたのは白無垢姿の鷺の精。海外からのお客様も多い客席でしたが、しっとりとした曲調の長唄と雪の世界にゆったりと舞う姿で、すぐに場内は『鷺娘』の世界へと引き込まれます。鮮やかに引抜きも決まって、可憐な町娘の姿になると一転して踊りも華やかになります。綿帽子を手にした踊り、テンポのよい傘づくしの踊りと、菊之助の言うとおり、女方のさまざまな面が披露され、衣裳が次々変わって見た目の変化でも客席をひきつけました。 

 

 そして、再び雪が降り出して地獄の責苦にあう鷺の精。ぶっ返りで鷺に戻り、髪をさばいて羽をばたつかせ、苦しみもだえる姿は、女方舞踊ならではの表現で、クライマックスまでお客様の心をつかんで離しません。歌舞伎座で『鷺娘』を踊るのは初めてと語っていた菊之助ですが、東京国際映画祭という舞台を得て、その踊りを通して歌舞伎を大きく国内外に発信することに成功した一夜となりました。

 

菊之助『鷺娘』披露、「歌舞伎座スペシャルナイト」の盛況

 『鷺娘』尾上菊之助 (C)2016 TIFF/SHOCHIKU

菊之助『鷺娘』披露、「歌舞伎座スペシャルナイト」の盛況

2016/10/27