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歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」初日開幕

2025年5月2日(金)、歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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▲ 『寿式三番叟』左より、尾上右近、中村萬太郎、尾上松也、中村歌昇、中村種之助
尾上菊之助改め八代目尾上菊五郎、そして尾上丑之助改め六代目尾上菊之助の襲名披露興行の始まりとなる「團菊祭五月大歌舞伎」。幕開きを飾るのは品格と儀式性、祝儀性を併せもつ『寿式三番叟』です。又五郎の翁、雀右衛門の千歳をはじめ、松也、歌昇、萬太郎、尾上右近、種之助の三番叟、米吉の附千歳と花形がそろい、襲名披露興行を寿ぎます。翁と千歳の厳粛な舞ののちに、躍動感あふれる三番叟。清新さのなかに厳かさをも感じさせる舞台に、客席は襲名披露興行へ期待に満ちたおめでたい雰囲気に包まれました。

▲ 『勧進帳』左より、市川團十郎、八代目尾上菊五郎
続いては、八代目菊五郎たっての希望で実現した“令和の團菊”の共演による『勧進帳』。奥州安宅の関を警護する富樫(八代目菊五郎)が登場すると、場内から大きな拍手と大向うが響きます。義経(梅玉)と四天王の亀井六郎(松也)、片岡八郎(尾上右近)、駿河次郎(鷹之資)、常陸坊海尊(男女蔵)に続き、花道に弁慶(團十郎)が登場。義経を守る一行と富樫の間に張り詰めた緊張感が漂います。勧進帳の読み上げや「山伏問答」と、物語は息もつかせずに次々と展開。弁慶と富樫の火花が飛び散るようなやり取り、弁慶の「延年の舞」を経て、幕切れで盛り上がりは最高潮に達し、弁慶が飛び六方で豪快に引っ込むと大きな拍手が沸き上がりました。

▲ 『三人吉三巴白浪』左より、中村時蔵、中村錦之助、坂東彦三郎
3幕目は『三人吉三巴白浪』より「大川端庚申塚の場」。錦之助の和尚吉三、彦三郎のお坊吉三、時蔵のお嬢吉三と、三人の盗賊が運命的に出会い、義兄弟の契りを交わす名場面です。節分の宵、朧月夜の大川端で、夜鷹のおとせ(莟玉)に声をかけるお嬢吉三。道案内を頼みますが、突然お嬢吉三は豹変し…。三人の盗賊による河竹黙阿弥による七五調の流麗なせりふの応酬、独特の頽廃美あふれる世界観が広がりました。

▲ 『京鹿子娘道成寺』左より、坂東玉三郎、尾上菊之助、八代目尾上菊五郎
昼の部は、襲名披露狂言『京鹿子娘道成寺』で打ち出しとなります。このたびは、八代目菊五郎、菊之助に、玉三郎が共演し華を添える“三人花子”の趣向で上演します。道成寺で行われる鐘供養の場に現れた白拍子花子(八代目菊五郎、菊之助)が、親子で息をぴったり合わせて娘心と鐘への恨みを踊ると、一気に客席が道成寺の世界に引き込まれます。所化と花子の禅問答ののちに紅白幕が上がると、桜花爛漫の道成寺に玉三郎、八代目菊五郎、菊之助の三人花子がそろい踏みし、その豪奢な舞台に場内からはため息が。華やかな手踊りや、鮮やかな衣裳の引き抜きに、何度も大きな拍手が上がるなか、花子が入れ替わり、目まぐるしく踊りが展開。襲名披露興行ならではの豪華絢爛な『道成寺』に、鳴りやまぬ拍手が続きました。
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▲ 『義経腰越状』尾上松緑
夜の部の幕開きを飾るのは、『義経腰越状』。兄頼朝に謀反の疑いをかけられた九郎判官源義経(萬壽)は、悪臣の錦戸太郎(坂東亀蔵)と伊達次郎(種之助)の兄弟に唆され、遊興にうつつを抜かす日々。泉三郎忠衡(権十郎)が軍師に取り立てようと五斗兵衛盛次(松緑)を迎え入れます。しかし大の酒好きの五斗兵衛は、禁酒の誓いを破り、つい盃に手をのばしてしまい…。酒に酔った五斗兵衛が、竹田奴を相手に三番叟を披露。おおらかながらも、襲名を寿ぐめでたさと厳かな雰囲気が漂うひと幕です。

▲ 『口上』前列左より、坂東玉三郎、坂東楽善、尾上菊之助、八代目尾上菊五郎、七代目尾上菊五郎、尾上松緑、市川團十郎、中村梅玉
続いては、『口上』。舞台上には、八代目菊五郎、菊之助をはじめ、七代目菊五郎、梅玉、玉三郎、楽善、そして松緑、團十郎ら新菊五郎の同世代の俳優が並びます。八代目菊五郎は、親子そろっての襲名が迎えられることへの謝意を表し、「歴代の菊五郎が大切にしてまいりました、伝統と革新に則りまして、精進してまいる覚悟」と決意を固めます。菊之助は「大きな名跡を襲名させていただく感謝とともに、立派な歌舞伎俳優になれますよう、この後もご後援のほど、お願い申し上げ奉りまする」と凛々しくご挨拶。七代目菊五郎も、「親子三代そろって舞台に立てること、この上の喜びはございません」と感謝を述べ、襲名を祝福する「八代目!」「音羽屋!」の大向うが響くなか、万雷の拍手のうちに襲名披露口上は幕を閉じました。

▲ 『弁天娘女男白浪』左より、中村萬太郎、尾上松也、中村歌六、八代目尾上菊五郎、市川團十郎
夜の部の切りは襲名披露狂言『弁天娘女男白浪』です。幕が開くと、鎌倉雪の下の浜松屋。娘姿の弁天小僧菊之助(八代目菊五郎)と南郷力丸(松也)が婚礼の支度として店を訪れます。弁天小僧は万引きを疑われ額に傷を負いますが、浜松屋幸兵衛(歌六)の詫びや鳶頭清次(松緑)のとりなしで、詫びの100両を受け取ります。そこに侍に扮した日本駄右衛門(團十郎)が現れ、二人の正体を盗賊白浪五人男の弁天小僧と南郷力丸と見破り…。弁天小僧菊之助の名ぜりふ「知らざァ言って聞かせやしょう」が朗々と響き、場内から威勢良く「音羽屋!」の大向うがかかります。

▲ 『弁天娘女男白浪』左より、市川新之助、尾上眞秀、中村梅枝、坂東亀三郎、尾上菊之助

▲ 『弁天娘女男白浪』左より、七代目尾上菊五郎、市川團十郎、八代目尾上菊五郎
白浪五人男がツラネを述べる名場面「稲瀬川勢揃い」の場では、菊之助の弁天小僧菊之助、新之助の日本駄右衛門、亀三郎の忠信利平、眞秀の南郷力丸、梅枝の赤星十三郎という新菊之助と同世代の俳優が勢ぞろい。その堂々とした演技に、盛大な拍手が送られました。大詰「滑川土橋」の場では、青砥左衛門藤綱を七代目菊五郎、子分の伊皿子七郎を八代目菊五郎が勤め、團十郎の日本駄右衛門と対峙します。七代目と八代目、二人の菊五郎が並び立って團十郎と共演し、襲名披露興行の初日を象徴的に締めくくりました。

▲ 「祝幕」には堂々たる富士の嶺が。写真の祝箱は場内2階ロビーでご覧いただけます

▲ 場内2階ロビーには八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助に贈られた鏡台も展示されています
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歌舞伎座地下2階の木挽町広場(かおみせ)では、「八代目尾上菊五郎 六代目尾上菊之助 襲名披露」の記念商品を販売していますので、観劇の際はぜひお立ち寄りください。
歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」は27日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。