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仁左衛門が語る、大阪松竹座「七月大歌舞伎」

 

 2025年7月5日(土)から始まる大阪松竹座「七月大歌舞伎」に出演の片岡仁左衛門が、公演に向けての思いを語りました。

語りきれない気持ちを

 仁左衛門が熊谷次郎直実を演じるのは、このたびの上演で13回目になります。「最初はがむしゃらで、形から入っていましたが、徐々に役に近づけていると思います。変えようと思わなくても自然と、変わってきていますね。私の気持ちも昔より入っていると思います」と、重ねてきた年月と、役の深まりを語ります。

 

 直実という人物についても、解釈を口にします。「自分の息子を手にかけること、その無情さと、忠義心を感じさせる複雑な役です。すべてを語りきれない、やるせない気持ちをもって演じています。一番つらいのは、首実検の“御賢慮に叶いしか、ただし直実あやまりしか、御批判いかに”の部分でしょうか。そこから先はすうっと気が抜けたようで、それまでの直実ではなくなります」。

 

 

肝心なのは「役の性根」

 「私が父(十三世仁左衛門)から教わったのは、必ず、首を相模へ直に渡すということ。これは昔あった型だと聞いています。相模が三段の途中まで上がって、親子三人の顔が並び、それぞれの思いでそのときの心境を表す。また最後の“16年は一昔…”という花道のひっこみでも、私は父の型で“夢であったな”と言っています。芝居では、型ももちろん大事ですが、やはり肝心なのは役の性根だと思っています」。

 

 「昔と今とでは歌舞伎の形も変わってきていると思いますし、変化してきたからこそ、歌舞伎は続いていると思います。ただ、私が心がけているのは、つくり物ではなく、“現場”をお見せしたいということ。実際にこういうことがあったのではと、タイムカプセルに入って現実を見るような気持ちになっていただきたいという思いで演じています」と、自身の演じることへの信念も明かしました。

 

八代目菊五郎、菊之助襲名への思い

 今回の大阪松竹座公演は、八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名披露となります。「(菊五郎は)女方だけでなく立役もされ、音羽屋の系譜を進む責任をもち、また岳父(二世中村吉右衛門)の播磨屋の型を残したいというところにも熱心に取り組まれていますね。その姿勢がうれしいです。非常に充実していることを感じますし、そういう意味ではこれからの歌舞伎を背負って立つだけのものをもっていると思います」と、特別な公演に向け、激励の気持ちも表します。

 

 また、熊谷次郎直実は中村錦之助との役替りが予定されています。「『吉例顔見世興行』(令和2[2020]年)で、錦之助さんが初役で1日だけ代わってくださったことがあります。錦之助さんにまたこの役をしていただきたいという思いもあり、本作品を選びました」と、今回ならではの配役にも期待が高まります。

 大阪松竹座「七月大歌舞伎」は7月5日(土)~24日(木)までの公演。チケットは6月7日(土)から、チケットWeb松竹チケットホン松竹で発売予定です。

2025/06/04